弱者の兵法:英語下手が英語圏で勝ち抜く策
MITの試行錯誤で見つけた、英語力の磨き方(上)

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MIT時代に先生に添削してもらった論文。書いては徹底的に直され、書き直してはまた徹底的に直され、という反復を4度も5度も繰り返し、僕はライティング・スキルを身に付けた。根気強く指導してくれた先生には感謝してもしきれない。

1.自信を持つ

なぜ日本人が話す英語はアメリカ人に伝わりにくいのか。発音が悪いからだろうか。文法の間違いが多いからだろうか。違う。

自信のない話し方をするからだ。

日本では自信過剰は疎まれる。しかし、アメリカでは自信のない人は軽視される。とりわけ男性に対してはそうだ。

僕は留学したばかりの頃、アメリカ人の前に出るとモジモジとしゃべっていた。「ボクは発音が悪いです、文法に間違いがあるかもしれません、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ」。そんな恐縮する気持ちを全身で表現しながら、下を向き、小声で、申し訳なさそうにしゃべっていた。

すると、僕はただ英語に自信がないだけなのに、相手には話している内容に自信がないように聞こえるらしい。その程度の内容なら聞く価値がないと(無意識的にだが)彼らは思う。下手な英語を一生懸命に聞いて理解しようという気を失う。だから伝わらない。伝わらないから、僕は余計に英語への自信を失う。そんな悪循環があった。

このことに気づいた僕は、意図的に話し方を変えた。たとえ英語に自信がなくても、相手の目をまっすぐに見て、腹の底から大きな声を出し、顔には余裕の笑みを作り、さも自信があるかのような話し方を意識的にするようにした。鏡を見ながら自信満々に話す練習をした。

すると聞き手の反応は驚くほど違った。発音も文法もちっとも改善していないはずなのに、ちゃんと話を聞いてくれるようになったのだ。

多くのアメリカ人は意識せずとも自信満々に話す癖がついている。だから、日本人が彼らの土俵で勝負するときには、それを意識的に行う必要があるのだ。

「自信」と「傲慢」とは違う

もうひとつ、アメリカにいる間に気づいたことがある。「自信」と「傲慢」は異なるということだ。自信とは自分に誇りを持つことだ。傲慢とは相手を見下すことだ。そして、傲慢な人は嫌われ、謙虚な人は好まれるのは、日本でもアメリカでも、万国共通である。

そして、自信と謙虚は共存させることができる。自分に誇りを持つことと、相手を尊敬することに、何ら矛盾はないからだ。

その好例を、2008年のアメリカ大統領選挙でオバマが行った数々の名演説の中に見つけることができる。彼は主要候補の中で誰よりも謙虚だった。それにもかかわらず、彼の話し方や表情からは揺るぎない自信が感じられた。彼が熱狂的に支持されたのは、単に黒人だったからではなく、自信と謙虚を見事に共存させて国民に訴えたからだと思う。

日本には伝統的に、謙虚を美徳とするすばらしい価値観がある。だから、われわれが謙虚さを失うことなく話し方に自信を加えることさえできれば、世界中の人が耳を傾けてくれるようになると僕は思う。

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