内容は、大学を卒業し就職する若い女性が自立し成長していく姿を、恋人とのネット経由のコミュニケーションを通じて描くドラマです。主人公を待っているのは悲しい結末なのですが、中国の若者にとっては等身大のラブストーリーとして感情移入しやすかったようです。
最初の1ヶ月のPVは810万を超え、同時に主題歌が大ヒット、小道具として使われたクマのぬいぐるみも人気商品になるなど、一大ブームを巻き起こしました。そして、中国国際広告祭、4Aクリエーティブ賞など、中国の名だたる広告コンクールで賞を総なめにしました。
アジア的表現は欧米人に届くのか?
2010年、ハワイ大学ビジネススクールの社会人向けMBAコース一行約30名が、アジア研修ツアーで北京電通を訪れました。彼らに向けて実施したブランドセミナーの中で、私はこのショートムービーをブランド活性化手法の一例として紹介しました。中国人のハートをつかんだこのフィルムが、まったく文化の異なるアメリカ人の目にどう映るか興味があったからです。
見せた後に感想を聞くと、案の定「メロドラマっぽい」という反応が出てきました。確かに、ショートムービーは時間的制約がある (通常5~10分程度、10分を超えると長編です)ため、シンプルで結末のわかりやすいストーリーになりがちです。そこを演技、撮影、編集の技術によって、視聴者を最後まで引きつけるエンターテインメントに仕立てるわけですが、アメリカ人にとってはありきたりな悲恋物語に見えたのだと思います。
公平を期すためにセミナーに同席していた当社の中国人女性社員に意見を聞くと、「私はこのフィルムを見るたびに涙が出てきます」と答えました。「メロドラマっぽい」作品を「見るたびに涙が出てくる」のが、ターゲットである「すれていない」中国人若年層の特徴です。
また、昨年あるグローバル自動車企業のフランス人幹部に、中国でのブランド戦略のお話をしたとき、このフィルムを見せて感想を求めると、「見ながら心の中で泣きました」と、思いもかけぬ答えが返ってきました。極めてアジア的な表現でも欧米人にもしっかり届くケースもあるのです。
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