テレサ・テンという、アジア最強コンテンツ 死後も10億人を魅了する魔力

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この連載コラムでは、中国のみならず、台湾、香港、東南アジアを含む「グレーターチャイナ」(大中華圏)をテーマとする。私は20代から40代前半の現在まで、留学生や特派員として、香港、中国、シンガポール、台湾に長期滞在するチャンスに恵まれた。そうした経験の中で培った土地勘を生かし、「大中華圏」 での見聞を硬軟取り混ぜて皆さんにお伝えしていきたい。
台北で開催されているテレサ・テン生誕60年記念の特別展。各地から多くの客が詰めかけていた

テレサ・テン(中国名・鄧麗君、デン・リージュン)の生誕60年を記念した特別展「追夢――永遠的鄧麗君展」がいま台北で開催されている。

死後20年近くが経つにもかかわらず、われわれはテレサ・テンを忘れることができない。甘くささやくような歌声を聴くと、不思議に心が切なくなる。何というか、情緒の中枢神経を刺激されてしまうのだ。

そんなことを考えていたら、どうしてもこの特別展を見たくなり、先週末に台北に飛んだ。

やりたいことは「勉強」

特別展の会場は蒋介石元総統を記念する台北のランドマーク、中正記念堂。会場の入り口には週末ということもあって長蛇の列ができていた。

代表曲「時の流れに身を任せ」の中国語版「我只在乎你」が流れる中で順番を待ちながら会話を聞いていると、観客の半分ぐらいは台湾で急増している中国からの観光客だった。中年の夫婦が子供に「子供の頃はいつも親に内緒でデン・リージュンをラジオで聞いていたんだ」と話し聞かせていた。

特別展は非常に周到に準備されたことがうかがえる高い水準のもので、なかなか勉強になった。4月21日まで開催しているので、台湾に行く機会があればぜひのぞいてほしい。

私にとっては、テレサ・テンの勤勉さを物語る展示の数々が特に印象深かった。14歳で学校を辞めたテレサ・テンだが、とても聡明な人物だったことが伝わってくる。彼女は「最も人生の中でやりたいことは」と質問されると、いつも「勉強」と答えていたという。どの分野でも長期にわたって成功する人物は、学歴に関係なく、確かな聡明さを持ち合わせていることがわかる。

たとえば語学。テレサ・テンは語学の天才だったかのように言われてきた。中国語、台湾語、広東語、日本語、英語、フランス語、インドネシア語を程度の差こそあれ、日常会話は不便のないほどには使いこなせたからだ。実際は、いつも滞在する国の辞書を持ち歩き、気になった表現や覚えておきたい言葉をノートに丁寧に書きとめていた。展示されていた大量の使い込んだ辞書や古ぼけたノートが努力の跡をしのばせる。

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