通販会社がやっている「買わせる」ための工夫 なぜ、埼玉や茨城の会社は不利なのか?
すぐれた通販ブランドは、明確な敵を作っています。そして、敵と戦う主人公が消費者であり、消費者が武器(商品)を手に入れることで、敵に立ち向かうというロープレ型のストーリーを作っています。ですから、多くの人は通販で商品を購入したときに、ちょっとした優越感や安心感を得ます。
これは「武器を手に入れた」という高揚感に基づいていたというわけなのです。
自宅にプレゼントが届くという感覚
通販が付加価値を高める工夫をもうひとつ紹介しましょう。きちんとした会社が届ける通販商品には、商品に添えた手紙に社長名か事業部長名、あるいは担当名の個人名が入っています。
「お買い上げいただきましてありがとうございます。株式会社○○です」
こう言われても、受け取っている側には、コミュニケーションを取っているという意識が生まれません。
「お買い上げいただきましてありがとうございます。電話担当の山下でございます」
「お買い上げいただきましてありがとうございます。商品担当の田中でございます」
そうすると、にわかに「山下さんから品物が届いた」「田中さんから品物が届いた」といった実感が高まります。
そして「個人からのお届け物をいただいた」というニュアンスに近い感覚が生まれます。とくに後払いの商品の場合は、届いた時点ではおカネを払っていないので「プレゼントされた」という感覚が強まります。
本当は代金と引き換えに商品を渡す純然たる商行為なのですが、通販には擬似的に贈り物を受け取ったときのような喜びを喚起する側面があります。ちょうど地方に住む友人や親戚から、地元の産品を贈ってもらったときのようなものでしょうか。
基本的に、自宅にプレゼントが届いて嬉しくないという人はいません。ですから、売れる通販会社ほど、「プレゼントを届けている」というイメージを与えるメッセージの届け方に余念がないのです。
なぜここまでして、通販ビジネスを展開する企業はがんばるのでしょうか。それは小売の垂直競合が激化しているからです。
大手流通チェーンはイオンとセブン&アイに、ほぼ集約されました。さらにアマゾン・楽天のECモール、確実に成長が見込まれるネットスーパーなど。すべての局面で小売業は、メーカーに対する優位性を高めつつあります。
このままでは、チャネルリーダーのポジションはメーカーから支配力を強化する小売の側に移行し、小売間の競合のなかでメーカーが形成したい付加価値はじわじわと食い潰されていきます。
メーカーの小売への対抗策として有効だと思われるのが、商品企画・製造から消費者への販売まで、すべてを自社で直接手がけるメーカー通販です。これは「ダイレクトSPA」(製造小売業)ともいえる業態です。
メーカー通販・ダイレクトSPAは、メーカー側からバリューチェーンを最大限に拡張します。小売にはないメーカーならではの強力な情報生産力で、商品・ブランドの付加価値をどんどん形成していけます。店販商品の底支え・支援のためにも、「高くとも売れる」通信販売は取り組むべきです。そのためにもさまざまな工夫を凝らし、お客様にアピールしているのです。
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