また、動脈硬化の一種に「アテローム性動脈硬化」という疾患があります。これは前述の生活習慣などの要因で、動脈壁が繰り返し損傷を受けることで起こるもの。やはりさまざまな心疾患を引き起こす要因の一つです。
米国グランドバレー州立大学の研究チームは、アテローム性動脈硬化症の多民族研究で、成人約6000人を対象に、12年に及ぶ追跡調査を行いました。この研究により、食生活が被験者の健康に及ぼす悪影響の実態が浮かんできました。
アメリカの比較的貧しい地域の住民は、アテローム性動脈硬化症の罹患率が高くなることが同大学の研究で確認できていましたが、その詳細な原因はわかっていませんでした。そこで、社会環境や住民の行動などがアテローム性動脈硬化症とどう関連するのか、12年間にわたって追跡調査したのです。
CTスキャンで冠動脈カルシウムを測定すると、動脈におけるアテローム性動脈硬化量を測定できることから、被験者は12年間のうち間隔を空けて3回の測定を受けています。その結果、進行の速い中高年の間では、新鮮な生鮮食品を購入できる店舗の利用が著しく低い傾向にあることがわかりました。
若くても、貧しくなくても、ひとごとではない
アメリカの貧しい地域では、生鮮食品を買える店舗が少なく、一方でファストフード店はたくさんあるという特徴があります。そんな生活環境に身を置くことで、動脈硬化に陥りやすくなっていたということです。
この結果をふまえ、米国心臓協会では、野菜、果物、全粒穀物、豆類、魚介類、皮なし鶏肉など、生鮮食品の摂取が心臓の健康に良い食事として推奨しています。また制限すべき食品として、飽和脂肪酸(食肉・乳脂肪)、トランス脂肪酸(マーガリン等)、塩分、糖類などを挙げています。
日本でも心疾患を誘発する要因の一つとして、よく生活習慣が挙げられていますが、食の欧米化・偏重も危険な傾向。普段から生鮮食品を購入できる環境にいながら、野菜の摂取不足に陥ったり、魚介類の多い和食から離れがちだったり、ダメな食生活が常態化している方は少なくないでしょう。
若いビジネスパーソンは、「心疾患なんてまだまだ先の懸念」と思っているかもしれません。が、生活習慣病は、毎日の積み重ね。今から野菜や魚を食べないような食生活を続けていると、ある日健康診断の結果を見て愕然とするかもしれません。
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