あえて「中規模」を狙う新興メディアの戦略 ブレイキング・メディアはBtoBに特化
同社は、ほぼ自前で資金を調達しているにもかかわらず、多様なセールス方法を構築した。そのおかげで、過去5年間に毎年25%から30%の売上増を達成していると、CEOのジョン・ラーナー氏は話す。
「F+Wメディア(F+W Media)」や「ニールセン・ビジネス・メディア」などのニッチなパブリッシャーで経験を積んだラーナー氏は、ブレイキング・メディアでCEOを務めて6年になる。同氏はまた、スミス氏やバーデン氏と同じく、ブレイキング・メディアの最初の出資者だ。ラーナー氏にCEOを引き受けた理由を問うと、自分の出資金を守るためと冗談めかしつつ、その熱心な読者層に惹かれたと答えた。
「私は過去、BtoBの世界でこれほど熱心なエンゲージメントを見たことはなかった。収益化は十分ではなかったが、その読者層は揺るぎない規模を獲得できると思った」。
現在、約40名の従業員を抱え、1日に70~80本の記事を公開しているブレイキング・メディア。ネット調査企業、コムスコアによると、もっとも人気があるサイトは「ファッショニスタ」で、2016年6月にはユニークビジター数が100万人弱だったという。
ただしブレイキング・メディアは、多くのメディア企業同様に、コムスコアのデータに異を唱えている。たとえば、グーグル・アナリティクスのデータでは、法律家向けのサイト「アボブ・ザ・ロー」の方が先に、100万ビジターを記録(6月)したのだそうだ。
それ以外のサイトは明らかに規模が小さく、ごく限られた想定読者層を対象としている。たとえば、「アボブ・ザ・ロー」の潜在的なターゲットオーディエンスは、米国にいる130万人の公認弁護士だ。コムスコアによると、同サイトの6月のビジター数は約27万人だったという。
小規模な職能集団が対象
このような小規模な職能集団を対象にサービスを提供することには、いくつかのメリットがある。彼らは比較的年齢が高く、裕福で、サイトにアクセスするのは往々にして業務中のデスクトップからだ。デスクトップはモバイルより広告料が高い。また、彼らが属する特定の職能集団は、パブリッシャーがハイレベルのサービスを提供しても割に合う対象でもある。
「ある特定のコミュニティに向けたサービスを提供すること、または、そのコミュニティに十分すぎるくらいのサービス(情報)を提供して利益幅を生むことが、メディアにおいて成功を持続させる方法のひとつだ」とは、パブリッシングコンサルタント企業、ティーミング・メディアの創業者、ドリアン・ベンコイル氏の持論だ。
これはまさに、ブレイキング・メディアが懸命に取り組んできたことである。売り上げの大半はダイレクト広告からもたらされるが、カスタム広告とネイティブアドが追いつきつつあり、売り上げの35%を占めてきた。さらに、イベント事業が15%を売り上げ、eコマース(同社によれば「ファッショニスタ」からのアフィリエイトの販売)とコンテンツライセンスなど、ほかの売り上げが最大10%を占める。