「2代目社長」に批判が集まりがちな根本要因 タレントも経営者も陥る「甘え」とその脱却法

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だからこの場合は、一定期間、一定額の赤字を仮設定して、その間だけ好きなようにやらせてみるといい。仮設定した赤字を超えそうだと判断したらストップする。そこで出た赤字は、子どもの教育費と思えばいいのである。

「つかず離れず」の関係になるために

しかし本当に子どもをしっかりした経営者に育てたいと思うのであれば、住まいも職場もまったく別にしたほうがいいだろう。地方に営業所があればそちらに回す。私自身、子どもを重要な地域拠点の責任者にして2週間に1度、本社に出社させ、会社全体の流れを学習させていた。こうすることで「つかず離れず」の関係になり、割り切ることができるようになる。

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このやり方の大きなメリットは、甘えがなくなるという点もあるがそれ以上に、人の扱いを学習することにある。

同じ屋根の下で社長と子どもが働いている場合、社員のことで問題が発生すると、みんな当然社長に相談してくる。しかし社長がいない職場であれば、子どもは自分で社員の問題を処理するしかない。

中小企業でいちばん難しく思いどおりにいかないのは、それぞれ別の考え方、意見をもっている社員をどうまとめていくかということだ。これを迷い、ぶつかって苦労しながら学べるから、子どもは別の職場で働かせたほうがいいのである。

いずれにせよ、「子どもを後継者にする」問題は、小さな会社の社長がもっとも客観的になれないテーマだが、諸先輩が経験してきたことを参考に、「甘え」のないよう後継者を育てていく気概が必要だ。

木子 吉永 東亜食品工業社長

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きし よしなが / Yoshinaga Kishi

1939年愛知県出身。62年早稲田大学卒業。輸出入の会社に勤務後、64年、東亜食品工業(株)に入社、常務等歴任。 その後、代表取締役社長に就任、現在に至る。経営コンサルタントとしても活躍、実際に会社を経営しつつ、小さな会社 の経営問題について研究。 著書に『儲かる会社にする仕組み』(あさ出版)、『社長、あなたは人に甘すぎる。』(あさ出版)、『こうすれば人は 働く!』(同文館)など多数。

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