「若者の酒離れ」は本当か(下) 答えは「NO!」。鍵は、万博世代の息子たち-その2

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酒は大人の教養である
―その8.(ウイスキー以外の)蒸留酒

酒の世界が、大きくわけると日本酒、ワイン、ビールといった醸造酒(じょうぞうしゅ)と、ウィスキーを代表とする蒸留酒(じょうりゅうしゅ)にわかれることは、以前、お話ししました。

今回は、蒸留酒の中でも、意外に知られていない、ジン、ウォッカ、テキーラ、ラムについて、知っておくと便利な基礎知識をお伝えします。

まず、蒸留酒というのは、おおまかに言えば、発酵させた原料を容器に入れ、加熱、気化したものを冷却してふたたび液体に戻してつくる酒です。気化させたものを冷やすので、アルコール度数は高く、ふつうは水を加えてから瓶詰めしますが、それをしないとスピリタスのような燃えるウォッカができるのです。

一般的なウィスキーでアルコール度数は40°。ラムやジンもたいていそれぐらいです。

ジンとウォッカは遠い親戚?

違うのは原料と仕上げの製法です。ジンは、ジャガイモや大麦などの穀類からつくった酒にジュニパーベリーなどの草根木皮をひたして香りをつけ、成分を浸透させたスピリッツ(蒸留酒全般をこう呼びます)。元は薬として使われていたという、まぁ、養命酒のようなもの。メーカーで使っている草根木皮が異なり、企業秘密としている社もあります。主に、イギリス、オランダ等で作られています。

ウォッカは、北ヨーロッパおよびロシアのスピリッツ。原料は、ジャガイモやさまざまな穀類と、ジンとほぼ同じですが、蒸留してできたものを、白樺の炭でろ過するところが違います。こうすることで、クセのない、まろやかな味に仕上がるのです。とは言っても、度数は40°かそれ以上ですけれど。

テキーラ、ラムは、暑い国からの贈り物。

少し前に流行った、クラブでの一気飲みのせいで、すっかりワイルド派の酒のイメージが定着してしまった、テキーラ。アガヴェという竜舌蘭の根の部分からつくる、メキシコのお酒です。

フランスのシャンパン同様、テキーラと呼べるのは、実はハリスコ州のテキーラ村周辺で作られたものだけ。また、熟成度によって表記が異なり、熟成なしは「ブランコ」、熟成はしていないがやや黄色っぽいものは「ゴールド」、オークの樽で2ヶ月熟成させたものは「レポサド」、1年以上寝かせたものは「アネホ」と、表示されています。テキーラを飲むときに持っておきたい、大人の知識です。

さとうきびから作るお酒、ラムは、テキーラと違い、カリブ海を中心とするエリアから、南米大陸のガイアナまで、幅広い国と地域で作られています。

さとうきびから糖蜜をとったあとのしぼりかすを蒸留する「インダストリー・ラム」と、糖蜜をそのまま蒸留してつくる「アグリコール・ラム」に別れ、前者は主にカクテル用に使われます。

ラムは、かつて植民地だった土地のお酒なのですが、それを実際に感じさせられる、興味深い傾向があります。それは、宗主国がイギリスだった地域のラムのアグリコール・ラムは、熟成させるとウィスキーのようにすっきりした飲み口でキレがあり、フランスが支配していた土地のものは、コニャックのような濃厚な甘さがあること。

1杯のお酒の中にも、それぞれ、歴史が生んだドラマがあり、それもまた、味わう楽しみのひとつだと言えます。

イラスト:青野 達人

次回は4月5日(金)掲載。テーマは、「バーについて」。新入社員にも読んでほしい、社会人生活の中でのバーの使い方を紹介します。

矢田部 正美 バー「Holly」オーナー

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やたべ まさみ / Masami Yatabe

1958年、和歌山県生まれ。20余年のコピーライター生活を経て、現在は、東京、下北沢の「割らない酒のバー」Hollyオーナー。若者の酒離れに一石を投じるべく、店主と6人の顧客で旗揚げした「バー・ホリーのお酒の本プロジェクト」代表。1女あり。趣味は、自宅の屋根裏部屋からぼんやり空を眺めること。
「下北沢 バー・ホリーのお酒の本」PRサイト
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