遊びだけでは満足できなくなる富裕層の心境 とどのつまり、教育は最大の関心事になる

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「一族の資産を守っていく存在ですから、高潔なだけでは十分ではありません。投資を知り、事業を知り、敵を作らない方法も知る必要があります。莫大な資産を守るばかりでなく、攻めて増やす方法も学ぶのです。世界経済は上がり下がりしますから、下がったときの対処法を知らなければ一族は破滅してしまいます」「クレディ・スイスなどは、富裕層の子女を対象にしたサマースクールを実施しています。世界中から10代の大富豪の子女を集めて、投資の世界の話をしたり、家を守る意義を説いたりしているといいます」

金融機関にしてみれば、現当主の後継者候補に教育を施し、次世代以降のビジネスにつなげるという長期的な投資である。

最後に、冨田さんはこう言った。

「年齢を重ねても、スキルはいくらでも増やすことができます。でも、20代の半ばを過ぎると、メンタリティだけは変わらないし、変えられない。多くの大富豪はそのことを知っているので、早めに子どもをボーディングスクールに送って試練を与えるのではないでしょうか」

五賢帝のひとりで第16代ローマ皇帝のマルクス・アウレリウスは『自省録』第一巻で神々と親族から得た教訓を書き連ねている。その中に次のような一節がある。

曽祖父からは、一般公開の学校へは通わないことを。
むしろ家で良い教師たちにつくことを(教えられた)。
そして、この種のことにはぜいたくに金を使うべきだということを知ったことを。
──『自省録』(水地宗明訳、京都大学学術出版会)

 

2世紀の昔から、上流(支配)階級は、子女の教育に心を砕いてきたようである。してみると、現代の“moneyed-class”(お金持ち階級)も「賢帝」なのか、と思った次第。

(Photo: Kimiko Nakahara, Getty Images, REUTERS/AFLO)

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