日本株は上昇後、嵐に見舞われる危険がある 「米国の利上げ=円安株高」は長く続かない

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市場が12月利上げをメインシナリオに描くのは、大人の事情を抱えるイエレン議長の本音が9月利上げは出来れば避けたいというものだと考えているからだ。

しかし、「利上げは経済指標次第」という認識を植え付けられた市場は、雇用統計次第で急速に利上げを織り込みに行き、そうした市場の動きが実際にFRBの利上げを呼び込んでしまう可能性は否定できない。FRBの信任に関わる問題だからだ。

イエレン議長が迫られる「2つの正常化」

今回の講演で市場に利上げを意識させることに成功したイエレン議長が次にやらなければならないことは、1回の利上げで打ち止め感を出さないように、「穏やかなペース」であっても利上げが続くことを印象づけることにあるはずだ。

それは、FRBが「金利の正常化」と「準備預金の正常化」という「2つの正常化」に取り組まなければならない状況にあり、利上げに打ち止め感を与えてしまうことは、「準備預金の正常化」を難しくしてしまうからだ。この点は、これまでのFRBの利上げ局面と決定的に異なる点だ。

大人の事情を抱えるFRBが9月に利上げに踏み切れるかは定かではない。しかし、重要なことは、メインシナリオが「利上げ先送り」から「利上げは射程圏」に変わることだ。金融政策の変更は、世の中の資金の流れを変えようとするものであり、投資家にとって最大のファンダメンタルズの変化であることは、肝に銘じておかなければならない。

結局、確かなことは、以前も触れたとおり、夏休みは終わったということだ。

米国の利上げが射程圏内に入ったことで、これまで100円前後で膠着状態になっていたドル円は101円80銭付近までドル高円安となり、海外の日経平均先物は1万6525円と、大証の引け値を100円以上上回った。

米国の利上げが射程圏に入ったことで、為替市場でのドル高圧力が高まる方向にあることは日本株には追い風だ。しかし、一方では利上げによって米国株式市場が不安定化していく可能性は否定できない。金融政策の変更は資金の流れを変えるためのものなのだから。これは日本株にとっては逆風である。

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