日本株は上昇後、嵐に見舞われる危険がある 「米国の利上げ=円安株高」は長く続かない

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「ただ議長は、利上げを決定する上でFRBは何を確認する必要があるのか、明確な道筋は示さなかった」(ロイター)

中央銀行総裁が利上げの時期を明確に示さないというのは当然のことだ。しかし、「何を確認する必要があるのか、明確な道筋は示さなかった」というところに、必ずしも「利上げは経済指標次第」で実施できないというFRBの大人の事情が滲み出ているようだ。

市場に動揺を与えず利上げ意識させたイエレン議長

それは言うまでもなく、11月8日に米国の大統領選挙を控えていることだ。仮にイエレン議長が今回の講演で、以前よく使っていた「雇用の弛み」を確認する必要があるという見解を示してしまうと、8月の雇用等が強かった場合に利上げに追い込まれかねない。それゆえに「何を確認する必要があるのか、明確な道筋」を示すことを避けたのだろう。

建前は「利上げは経済指標次第」だが、FRBはそれ以外に無視しえない大人の事情を抱えていると見ておいた方が賢明のようだ。

イエレン議長の講演内容が市場予想以上に「タカ派」だったことに加え、フィッシャーFRB副議長も追随して「タカ派」的見解を示したことで、市場での利上げ観測は高まった。

CME FedWatchベースで市場が織り込む利上げの可能性は、9月が33%と前日比12%上昇し、年内が59.1%と同7.4%上昇した。こうした見通しを反映する形で政策金利動向を反映しやすい米2年国債の利回りは前日比0.059%上昇の0.845%となったほか、米ドル指数も前日比0.80ポイント上昇の95.48となる一方、ニューヨークダウは53ドル下落し、市場は「射程圏に入った利上げ」に備える動きを見せた。

大統領選挙が迫るという慎重さを求められる局面で、イエレン議長は株式市場に不要な動揺を与えることなく、金融市場に利上げを意識させることにひとまず成功したといえる。

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