ヴィレッジヴァンガード、大赤字脱却なるか 雑貨チチカカを売却でも見えぬ復活の道筋
多大な負担を伴っての赤字子会社の切り離しとなったが、ヴィレヴァンは「これでようやく出血を止められる」(会社側)という。ただ、市場の評価回復にはもう少し時間がかかりそうだ。
MSCBが株価に影響?
ヴィレヴァンはチチカカの譲渡から1週間後の8月8日、クレディ・スイス証券を引受先に、新株予約権を発行している。社債付きではないので、発行によって手にする対価は1000万円あまり。
新株予約権の権利行使期間は発行から2年間。権利行使価格には下方修正条項が付いているので流動的ではあるが、当初価格の1194円を元に計算すると、全て権利行使されても手取り総額はわずか8億7877万円でしかない。下限の597円なら4億4178万円である。その分、希釈化率も最大で9.6%にとどまる。
ヴィレヴァン本体の在庫評価損やチチカカ切り離しにかかわる関連損など、多大な負担によって純資産が目減りしたとはいえ、この程度の資金調達に困る状況とは思えない。発行した新株予約権全てが権利行使される保証もないのに、わざわざ新株予約権を使う理由は何なのか。
会社側は「目的はキャッシュの調達でもなければ自己資本の補填でもなく、自己資本に対する会社としての意識を社内外にアピールするため」だと説明する。小売りは在庫商売であり、厚い自己資本は絶対条件。赤字を止めるためにやむなく一時的に借り入れが膨らむが、自己資本に対する意識は変わっていない。
そのことを表明するための新株予約権発行だと会社側は説明しているし、発行条件がヴィレヴァンにとって一方的に不利というわけでもない。だが、「下方修正条項付きの新株予約権」(通称MSCB)は、かつてゾンビ企業のいかがわしい調達にさんざん悪用された歴史があるだけに、とにかくイメージが悪い。
加えて、会社が公表した今2017年5月期の業績見通しが、もの足りない水準だったことも、大幅な株価下落を招いた要因と言えるだろう。
表面的にはチチカカの切り離しで営業利益は9億円改善する計画だが、前期にチチカカが出した営業赤字が9億円だったから、営業利益は実質的に横ばいにとどまっている。さらに経常利益が5億円台に回復するのに最終損益はわずか1800万円。店舗数が多いヴィレヴァンは、事業税や住民税の負担が重く、5億円程度の経常利益ではこの程度の純利益の水準になってしまう。
何より本業のヴィレヴァンの店舗網拡大が望めない中、どのような成長戦略を描けるのか。本格的な復活の道はまだ遠そうだ。
(撮影:今井康一)
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