国連が定めた「難民救済策」は機能していない 新たな支援システムと日本の関与が必要だ

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UNHCRの作り上げた持続的解決手法が機能せず、難民の9割が経済的な体力に乏しい発展途上国で20年以上も暮しているという図式は明らかに現行の難民支援システムの崩壊を物語っている。

我々は現在の「6500万人」という強制移住者の被害者数を机上の概念としてではなく現実の問題として捉える必要がある。この6500万人という数字は英国全体の人口よりも大きく、仮に強制移住の被害者を一国の人口としてみると世界で21番目に人口の多い国が出現したこととなる。これだけの規模にまで膨れ上がった問題を解決するには既存の難民支援システムを修正するだけでなく、新たな難民援助のパラダイムについて考えることが急務だ。

日本が提案した「人間の安全保障」は重要な理念

日本もこの新たなパラダイム構築について重要な役割を果たせるはずだ。日本の政府開発援助(ODA)大綱は、積極的平和主義の立場から発展途上国を含む国際社会と協力して、世界が直面する問題の解決に取り組んでいくことを謳っている。難民・強制移住の問題は正にこうしたグローバル・アジェンダの一つである。

また日本が推進する「人間の安全保障」は脆弱な立場に置かれやすい人々の人権・保護に特別な留意を払っており、新しい難民支援の根幹にもなりうる重要な理念だと私は考える。

このコンセプトは日本政府の呼びかけで前国連難民高等弁務官である緒方貞子氏を中心に発足された「人間の安全保障委員会」が概念構築に大きな役割を果たしてきた。その要諦は国境を越えた世界規模の問題が増加するなか、従来の国家から人間一人ひとりにまで安全保障の概念を拡大させたもので、一国家では対応が難しい難民・強制移住の課題に対処するためには極めて有効なアプローチだといえる。

難民受け入れは「バーデン・シェアリング(負担の分担)」と表現されることが多いが、本来これは「レスポンシビリティー・シェアリング(責任の分担)」と理解されるべきだ。現行の途上国に極端に依存した難民支援システムを脱却し、難民創出国、受け入れ国、ドナー国、国際機関、NGOが各々のレスポンシビリティーを全うする新しい難民支援のパラダイム構築は国際社会全体で取り組むべき喫緊の課題である。

小俣 直彦 オックスフォード大学難民研究センター 主任研究員

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おまた・なおひこ / Naohiko Omata

人類学をバックにアフリカを中心に調査を行う。難民キャンプで長期間を過ごすことも多い。東京大学法学部卒、タフツ大学フレッチャースクールで修士号、ロンドン大学SOASでPh.D取得

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