国連が定めた「難民救済策」は機能していない

新たな支援システムと日本の関与が必要だ

さらにショッキングな数字が本報告書には記載されている。UNHCRの試算によると2015年末の時点で難民が持続的解決を得られぬまま亡命国に滞在する期間は平均で26年に達しているのだ。大半の発展途上国の平均寿命が60歳代前半であることを考えると彼らは人生のほぼ40%の期間を難民として生活していることになる。

また難民としての滞在期間が長期化すればするほど彼らに対する国際援助は減少する。難民に対する支援がもっとも集まるのは世間の関心・同情が高まる「エマージェンシー(緊急事態)」の時だ。人間の生死がかかっているエマージェンシーの段階では食料、水、衣類、医療・薬などがドナー国から人道支援として無償で供給される。また世間の関心も高く、報道も増えるため必然的に援助の金額や物資の供給も増えるのである。

「長期化した難民状態」はこれと正反対のケースである。既に亡命国で何十年も過ごした難民に対する世間の関心はほぼ消滅しておりメディアがそうした話題に食いつくこともない。そしてドナー諸国からの援助が縮小するにつれて受け入れ国の政府も難民に対する締め付けを強める傾向がある。多くの国際援助が期待できない「長期化した難民」には受け入れ国にとっては「援助のうまみ」が少ないからである。こうした理由により「長期化した難民状態」は現在の難民支援の現場において関係者が最も頭を痛める極めて深刻な問題のひとつなのである。

難民キャンプの閉鎖を宣言した"ケニアの反乱"

筆者は今年3月から6月にかけて東アフリカのケニア、ウガンダ、ルワンダの3カ国を調査のため訪問した。いずれも相当数の難民を抱えているが、とりわけケニアは今年5月の時点で60万人超、ウガンダは50万人超の難民を受け入れる「難民受け入れ大国」である。もちろんいずれも経済的には決して裕福な国ではない。

私がケニアに滞在していた今年5月に、ケニア政府は30万人以上のソマリア難民が暮らし「世界最大の難民キャンプ」といわれるダダーブ難民キャンプを、治安悪化と環境保護のために今年11月までに閉鎖すると発表し、世界の難民問題関係者に衝撃を与えた。

先進国の政府や国際人権団体らがケニア政府の決定を非難しているが、同国政府は、「(ケニアより)経済的に遥かに裕福なEU諸国はシリア難民の受け入れを拒絶している」と反論、「そもそも難民受け入れの負担は本来、国際社会全体で分担するものであり特定国だけが過度の重荷を背負わされるべきではない」と主張し、キャンプ閉鎖を撤回する様子はない。

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