国連が定めた「難民救済策」は機能していない

新たな支援システムと日本の関与が必要だ

二つ目の重要なポイントはこうした難民の人々の滞在地域である。UNHCRの報告書によると2015年末時点で世界の難民のほぼ9割、86%が発展途上地域に庇護を求めて亡命している。受け入れ国の上位10カ国を見ると中東とアフリカが独占している。

昨年末時点で世界最大の難民受け入れ国はトルコで約250万人の難民を受容している。その大半はいうまでもなく国境を接するシリアからの難民である。2位以降はパキスタンの160万人、レバノンの110万人、イランの100万人、エチオピアの74万人、ヨルダンの66万人と続き、それ以降にはアフリカ諸国が名を連ねる。

この結果はある意味で自然なことである。難民創出国の大多数はアフリカ、中東などの発展途上地域にあり、自国を追われた難民の大半はまず隣接する近隣諸国に逃げ込み、保護を求めることとなるからだ。

経済力の乏しい途上国に多くの難民が押し寄せる

2015年の春頃から欧州の政治家やメディアは「欧州難民危機」という表現を頻繁に使っており、あたかも世界中の難民が欧州地域に押し寄せているような発言や報道を続けてきた。しかし、統計を見るとそうした表現は誇張されたものであることがわかる。UNHCRの報告書によると欧州で最も難民を受け入れているのはドイツ、フランスだがそれでも2015年末時点の数字は各々32万人、27万人にとどまる。

今も世界の強い関心を集めるシリア難民は全世界に約480万人いるが、そのうち約9割は国境を接する周辺のトルコ、レバノン、ヨルダンに亡命しており欧州までたどり着いたグループはむしろ少数派だ。ちなみに受け入れ国の人口対比で一番多くの難民を受容しているのはレバノンで人口1000人に対して183人が難民、つまり 5人に1人が難民という飽和状態である。

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