英語が話せないと、「真の日本人」になれない 一人娘をインターナショナルスクールに入れた理由

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娘をインターに行かせていると言うと、必ず聞かれたのが、「大学は海外ですか?」である。この答えは「そうです」で、実際、そうするほかに選択肢はない。

インターは日本の文科省の認可した教育機関でないので、ハイスクールを出ても日本の高卒とはならない。だから、日本の大学への道は、上智大学の国際教養、国際基督教大学(ICU)以外は閉ざされていた。今では、入学を認める大学も多くなったが、当時はそうだった。

そうして、次に大抵こう言われた。

「アメリカの大学に入学するのは易しいそうじゃないですか。インターは、日本のように受験勉強がなくていいですね」

この認識は完全に間違っている。確かに、インターには日本の学校で行われる詰め込み教育による受験勉強はない。しかし、アメリカは日本以上の学歴社会だから、もっと厳しい受験勉強が必要だ。それに、一流大学となると、入るのは日本のトップクラスの大学より難しい。

本当の戦犯は、日教組とPTA

1980年代から90年代にかけての「国際化」の掛け声とは裏腹に、日本の教育現場で進んだのは「ゆとり教育」だった。ゆとり教育は、アンチ「詰め込み教育」から生まれたものだが、これが、その後の日本の子供の学力を世界レベルで落としたのは明白だ。

ただ、私はゆとり教育そのものを悪かったとは思っていない。ゆとり教育といえば、すぐに“戦犯”として寺脇研氏(元文科省官僚、現コリア国際学園理事)の名前が挙がるが、本当の戦犯は、学校の教師(日教組)と親(PTA)だ。

教師と親が、子供たちの自由を尊重する教育という名目で、両者が「怠けられる道」を選んだのが、ゆとり教育である。このゆとり教育が本格的に始まったのは1992年だが、当時は、私も寺脇氏を許せない人物と思っていた。

しかし、ゆとり教育が崩壊し、寺脇氏が文科省を退官してから直接話を聞き、これが思い違いだとわかった。詳しくは、私が編集した寺脇氏の著書『さらばゆとり教育 学力崩壊の「戦犯」と呼ばれて』(2008年、光文社)を読んでほしい。

いずれにせよ、日本では国際化は進まず、国際化教育に至っては今も行われていない。脱ゆとり教育をするなら、今度こそ国際化教育と思ったが、そうはならなかった。かろうじて2011年から、小学校高学年からの英語教育がスタートした。しかし、これは週1時間、年間35時間というもので、「話せなくなる英語教育」がさらに強化されたにすぎない。

いったい、日本ではいつになったら、「真の日本人」をつくる国際化教育がスタートするのだろうか?

山田 順 ジャーナリスト

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やまだ じゅん / Jun Yamada

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年『光文社ペーパーブックス』を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースも手掛ける。著書に『出版大崩壊』『資産フライト』『出版・新聞 絶望未来』『2015年 磯野家の崩壊』などがある。

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