あなたの母親は、私がこれまで見聞してきた悪い母親の中でも、トップクラスのひどさです。あなたが実家に寄りつかず、距離を置いておられるのは当然で、私があなたでもそうします。親は親らしいことをしてこそ親なのです。
9つ親らしいことをしたとしても、1つの、親としてあり得ない子どもへの仕打ちは、9つを帳消しにしても補えるものではありません。あなたはこれからも、その様に距離を取るべきだと思います。
山より高く海より深いのが親の愛情
私には数年前、パリから汽車で2時間の港湾都市、ル・アーヴル駅で見た忘れられない光景があります。少し生活に疲れたような30代の娘が、やはり裕福そうでない60歳前の両親を見送っています。それが今生の別れのように3人で抱擁し、大声で泣いて別れを惜しんでいるのです。列車が駅を離れて1時間経ってもその夫婦は泣き続け、ときどきデッキまで行って、泣きじゃくっていました。
彼らがあまりにも悲しそうなので、私もくぎ付けになりました。宇宙に人が長期に滞在するこの時代に、一方が地球の反対側の奥地に住んだとしても、これほど悲しい別れになるかしらと、しばし想像をめぐらせました。問題は距離的なことだけとは限りませんから一概にはいえませんが、ひとつ明確なことは、彼らがとてもお互いに大切な存在で、愛し合っているということです。
しかも、ほとんどの人にとっては、幸運にも駅で、このように別れなければならない運命にないだけで、いざとなったときは、これが普通の親子の情愛です。ひるがえって例えばあなたが親と、飛行機で乗り継いで2~3日かかる距離で暮らしていたとして、あなたのご両親は、あなたに会いに来てくれるでしょうか。別れをこのように、大泣きして惜しんでくれるでしょうか。
世間では、子どもの将来を考えたうえでの度が過ぎた厳しいしつけや、親の欲、そして見栄が介入した子弟教育も、珍しくありません。しかしこれらにはその根底に、子を思う親の愛情が疑うことなくあるので、その親の未熟さなどは、どこかで帳消しにされているのです。
あなたのお父様の「しつけ」やお母様のやったことからは、山なら海抜ゼロ㍍以下のように、平地ほどのごく当たり前の常識的な親の愛情さえ、感じられません。子どものためなら、ためらうことなく自分の命も差し出すことが出来る、普通の親の愛情のかけらもありません。
お母様は母親として命を張ってあなたを守るどころか、援護射撃してあなたを追い詰めたも同様です。それでもあなたが彼らと、親子として接するべきだとは私は思いません。あなたがかわいそうすぎます。
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