性暴力に走るのは、いたって「普通の人間」だ 映画「月光」、加害者の描き方に込めた思い
「魂の殺人」とも呼ばれる性暴力被害は、被害者の身体のみならず心にも深い傷を残す。性暴力の被害者が、いかに過酷な精神状態に追い込まれていくのか。その様子をリアルに描いた映画『月光』が、6月11日(土)より新宿K’s cinemaにて公開される(以降、全国順次公開予定)。
映画の中で、ピアノ教師のカオリ(佐藤乃莉)は、教え子の少女・ユウ(石橋宇輪)の父親であるトシオ(古山憲太郎)に、性的暴行を受ける。一方、ユウもまた、父親からの性的虐待にさらされていた。自らの被害を誰にも打ち明けられず、不安定な心を抱えたまま、孤独と寂しさの中で苦しむカオリとユウ。2人は運命に導かれるようにして出会い、互いの痛みを共有していく。
今作のメガホンを取った小澤雅人監督は、児童虐待や若者のホームレスといった社会問題を描き続けてきた。小澤監督は、どんな想いでこの映画を撮ったのか。小澤監督と、カオリを体当たりで演じた主演の佐藤乃莉さんに話を聞いた。
知らないだけで、性暴力の被害者はたくさんいる
――小澤監督はなぜ今回、性暴力というテーマに挑んだのでしょうか。
小澤:児童虐待をテーマにした『風切羽~かざきりば~』(2013年公開)という映画を撮った関連で、児童養護施設を訪問した際に、性的虐待の被害者がたくさんいることを知ったんです。その時に、自分が知らないだけで、性暴力の被害者はたくさんいるという事実と、被害者の葛藤や苦しさを伝えなければならないと思いました。
――佐藤さんは自らカオリ役を志願されたそうですね。
佐藤:オーディションでいただいた台本を読んだ時に、『ビビビ』じゃないですけど、ぜひ演じたい、私がやらなくちゃいけない、と縁を感じたんです。彼女の、1人ぼっちの寂しさがすごく分かりました