ユニクロ 疲弊する職場 [拡大版] サービス残業が常態化、うつ病の罹患率も高い

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グローバル経営を唱え、海外開拓や英語必修化で注目される同社の人間関係は、外資系企業のようにビジネスライクなものだと思われがちだ。だが内実を探ると、同社の労働環境や人材育成手法は、いわゆる「体育会系」の性格が強い。

外国語に堪能で、海外にかかわる仕事をしたいとユニクロを志望したBさんは、入社してみて外からのイメージとのギャップに愕然とした。「入社直後、 来店したSVに開口一番、『あいさつがなってない』と大声で怒鳴りつけられた。店舗裏の休憩室に入るときは必ず直立不動で『失礼します』と大きな声であいさつするなど、異様な感じがした」。

部下への指導の行き過ぎも、跡を絶たない。08年に名古屋高裁は、ユニクロで店長代行として勤務していた原告が、店長から顔面に頭突きされるなど暴行を受けたうえ、本部の管理部長からも「ぶち殺そうか、おまえ」と言われた件の違法性を認め、1000万円近い損害額を認めた。

本誌が入手した同社の社内資料によれば、昨年2月と3月にも部下への「辞めれば、死ねば」「バカ、死ね、使えない奴」といった暴言による懲戒処分が複数下されている。

上限240時間を 190時間に短縮検討

労働環境の改善に向け、同社も手をこまぬいているわけではない。最近まで人事担当役員を務めていたユニクロ日本COO(最高執行責任者)の若林隆広グループ執行役員は、長時間労働の抑制とサービス残業の撲滅に関しては、「できる努力は最大限やっている」と語る。

現在は月間労働時間の上限を、現行の240時間から社員の労働時間平均に近い190時間へと減らすことを検討中だ。またサービス残業の撲滅についても、「社内の相談窓口、内部監査の強化に加え、商業施設の入退館管理や機械警備のデータとの突き合わせも徹底したい」(同)。

こうした仕組みづくりの背景にあるのは、店舗での作業量は240時間以内で十分こなせるという認識だ。だが、こうした現状認識は、同社の現役社員、元社員の語る現実とはまるで異なる。そして目下、全国の店長を悩ませているのが、昨年末に始まった週末セールの拡大だ。これまでは土曜日、日曜日の2日間だけだった週末セールが、金曜日と月曜日にも行われるようになった。

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