ユニクロ 疲弊する職場 [拡大版] サービス残業が常態化、うつ病の罹患率も高い

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さらに、「半年店長」の政策にもマイナス面があったと認める。「店長になれず、今後のキャリア形成が難しいと判断して辞める人も非常に多い。若いうちに世界で活躍する機会を作ろうとした取り組みの裏で、退職者も増えてしまった」(若林執行役員)。

その対策は、入社希望者とのミスマッチ解消だという。「グローバル企業となっても、われわれの仕事はお客様に何をできるのに尽きる。そうした泥臭い部分もしっかり伝えたい」(同)。12年の新卒採用では、入社半年での離職率は3.9%。入社1年でも10%程度だと予想しており、「半年店長」政策開始前の通常ペースに戻る見込みだという。

ただ、労働環境の厳しさの根に「物言えぬ社風」があることは見てきたとおりだ。そこが変わらなければ、今後も長時間労働は続くだろう。発覚した場合のみ、個人の不始末として処分されるという、いびつな構造が残りかねない。

冒頭の採用イベントで、ユニクロ経営陣は「当社は人材採用・育成産業だと考えている」と語った。人材が命のはずの同社で、今後も大量離職が続くようでは、20年での売上高5兆円、「日本発世界一」の夢もむなしくなる。グローバル戦略の足元で、現場の苦悩が続いている。

*この特集記事の全編は3月4日(月)発売の「週刊東洋経済」に掲載しています(全9ページ)

風間 直樹 『週刊東洋経済』編集長

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かざま・なおき / Naoki Kazama

1977年長野県生まれ。早稲田大学政経学部卒、法学研究科修了後、2001年東洋経済新報社に入社。電機、金融担当を経て、雇用労働、社会保障問題等を取材。14年8月から17年1月まで朝日新聞記者(特別報道部、経済部)。復帰後は『週刊東洋経済』副編集長を経て、19年1月から調査報道部、同年10月より現職。著書に『雇用融解』(07年)、『融解連鎖』(10年)、電子書籍に『ユニクロ 疲弊する職場』(13年)など。

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