「ブロックチェーン」は社会の基盤になるか 伊藤穣一氏、村井純氏らが指摘
「社内データベースを基にしたバンキングシステムは内部者によるアタック(攻撃)に対して脆弱。暗号技術によってセキュアにする方がむしろ安全だ」と語る一方で、「セキュリティなしではブロックチェーンは拡張していかない」と語り、暗にTheDAOの一件をつついている。
しかし、同氏は銀行が進めるブロックチェーンの部分的活用ではなく、パブリックブロックチェーンにより通貨、バンキングシステムから、アプリケーションを包括する新しい分散型システムの構築に意欲を見せた。
松尾氏:セキュリティと非中央集権のトレードオフ
世界初のブロックチェーン専門学術誌「LEDGER」エディターで、MITメディアラボ研究員の松尾真一郎氏が指摘したのは、ブロックチェーンの根幹的思想である非中央集権とセキュリティがかなりのレベルでトレードオフの関係にあることだ。
ビットコインが2008年のサトシ・ナカモト論文以降、ブロックチェーンが学術面での数理的な検討を経ずして進展しており、アカデミアが関与することでより強固なものとして機能すると指摘した。TheDAOアタック以降に書いたブログ同様、特に安全性の数学的な証明や検証などが重要だと語った。
・暗号・暗号技術としての応用としての安全性がまだ確かめられていない
・システム全体としての安全性を確保するための検討がまだ
・非中央集権制を高めることとセキュリティのパフォーマンスを確保するにはかなりのトレードオフの関係がある、そこに関する検討が必要
「インターネットに関しては大学がリサーチして、企業が実装して、標準化して、開始するというちゃんとした歩みをやっていた。ブロックチェーンでは2008年のナカモト論文からすぐにさまざまなビジネスを始めており、リサーチなどの過程を抜かしている。
インターネットには1985年に開始した『NSFネット』というプロジェクトがあった。インターネットの技術を10年ほどかけて鍛えた。いろんなインターネットの技術を成熟させた」。