「ブロックチェーン」は社会の基盤になるか 伊藤穣一氏、村井純氏らが指摘
伊藤氏はブロックチェーンの基盤しっかり構築できる人材と仕組みが必要だと指摘。「インターネットは時間をかけてきた。学者だったり、NPOだったりが少しずつ直しながら、しっかり作ってきた。ブロックチェーンでは、そういう人が全部ベンチャーに入っちゃって、どうやってカネを儲けるかに集中している。どうやってインフラを作ろうかと考えている人はいなくなりつつある」。「インターネットは損をしても大したことない。失敗しても問題はなく何度でも失敗できる。ただ、ブロックチェーンはお金を扱っているので、失敗するとそもそもの信用を失ってでもお金を戻すか、金を失うかとなる」。
伊藤氏が議論の前提にしているのは、6月下旬に起きた分散型プラットフォーム「イーサリアム(Ethereum)」の自立型分散ファンドThe DAOへのアタックだ(関連ブログ)。エミン・グン・シレール・コーネル大教授らからコードの脆弱性が指摘されていたにもかかわらず、イーサリアムのコミュニティがファンドを組成。150億円相当(当時)の資金を集めたが、すぐさま脆弱性をつかれ50億円相当の暗号通貨が抜き取られた(この問題は後を引き、50億円相当の損失をがん手術のような方法で回避した後、コミュニティの間で深刻な対立が生まれている)。この一件で、ブロックチェーンにとっての喫緊の課題がセキュリティであることが浮き彫りになった。
伊藤氏はこう説明する。「TheDAOはビットコインの夢のひとつ。契約(コントラクト)が勝手に動いて、人間ではなくソフトウェアで運営しよう、というとても美しい夢だった。ただ、それが法的に何なのか説明せず、150億円(当時)ほど集めた。銀行の基幹系に使われる言語ではなく、書きやすいジャバスクリプトに似たような言語でつくってしまい、バグが発生した」。
「バグが発生し、アタッカーに50億、お金をもっていかれた。ビットコインの言語は難しくて、かちっとしている。しかも、お金が何千億円ものっているから実験しづらい。もっと実験しやすいのがイーサリアムだった。失敗の原因は使っていた言語がWebっぽいことだ。銀行のシステム、重要な飛行機の制御システムとかを書いているエンジニアが書かないと厳しい。ブロックチェーンに必要な暗号、分散処理、経済、決済を知っているエンジニアのは世界に数百人しかいない、日本には十数人しかいないのが現状だ」。
ビットコインの重要技術の父「中央銀行より効率的」
ビットコインのインフラアーキテクトである企業ブロックストリーム(Blockstream)のアダム・バック氏は既存のバンキングシステムよりもブロックチェーン・暗号通貨の方が、将来性があると語っている。既存のバンキングシステムはそこまで堅牢ではなく、銀行間国際送金システム「SWIFT」やインド中央銀行もアタックを許していることなどを指摘した。