「優秀なあの人」が独立しても儲からない理由

会社員時代の栄光や価値観など通用しない

起業家は銀行から借金をできるようになって、ようやく一人前といえます。実際に銀行から借りるかどうかはケースバイケースですが、少なくとも借金は悪だと決めつけている人は独立に向かないのです。

起業家にとって現金はガソリンのようなもの。満タンだったら最初から全力で突っ走ることができます。ガソリンが少ししかなければ、何をするにもおっかなびっくりになって、成功のタイングを逃すこともあります。せっかく目の前に大きなチャンスがあるのに、おカネがなくて動けない……。それでは、成功するはずのビジネスもうまくいきません。

●食えない人は「労働自体を美徳とする」
●食える人は「労働そのものには価値を感じない」

日本の企業も実力主義になってきたとはいえ、いまだに会社員は無遅刻、無欠勤のまじめな人が評価される傾向にあります。どれだけ長い時間、会社で作業をしたかに価値が置かれ、労働そのものが美徳とされます。だから、「長時間働く人が偉い」という変な価値観が生まれてしまうのです。

「どうやったら働かずに稼げるか」が大事

起業の世界は正反対です。起業家は結果が出ないと1円にもなりません。しかし逆に言えば、たとえプロセスをすべて吹っ飛ばしてでも結果さえ出せば、ビジネスはうまく回ります。だからこそ、成功している起業家ほど、労働そのものには価値を置きません。むしろ、「どうやったら働かずに稼げるか」を真剣に考えます。

起業家というと、年中無休で働いているというイメージがあるかもしれません。もちろんハードワークが求められる局面もありますが、何年、何十年も馬車馬のように働いていたら、体を壊してしまいますし、人として幸せとは言えません。

かつて洗濯機が発売された当初、「そんなラクすることばかり考えていたら、家事は務まりません」と言って、洗濯機を買うことを拒んだ主婦がいたと聞いたことがあります。彼女たちにとって、時間をかけて汗水流し洗濯板を使ってゴシゴシと洗うことが美徳だったのでしょう。

『起業して食える人・食えない人』(日本実業出版社)。画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

しかし、洗濯機を使えば、家事の時間を大幅に削減できるので、その分家族のためにおいしい料理をつくる時間に充てることができるし、場合によっては空いた時間に外で働くことも可能になります。先進的な主婦は、洗濯機を進んで買って、新たな価値を生み出すことに成功したことでしょう。 

起業家も同じです。成功している起業家は、できるだけ労働することなく新しい価値を生み出す方法を日々追求します。

私は「起業するべきだ、いや、会社に残るべきだ」と言いたいわけではありません。起業家に向かない人がその適性に気づかず、独立をして一家が路頭に迷うようなことは避けねばなりません。逆に起業家としての才覚があるにもかかわらず、つらい思いをして会社員を続けている人がいるのなら、それをみすみす眠らせておいたままにするのは、社会的に見てももったいない話だといいたいのです。

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