日本はなぜ、極右など右派ばかりなのか 島田雅彦×波頭亮 日本の精神文化のゆくえ(上)
波頭:島田さんは「寄る辺ない」という表現を使われましたが、今は国民全体が物心共に寄る辺ない状態になっているように思います。
経済成長が止まり、ますます高齢化が進んで、社会保障負担が重くなってくると、「物」のほうは底が抜けそう、あるいはもう抜けていると言っていいのかもわからない。「心」のほうも、新しい希望ややりがいという軸がない。
今の若い世代は社会が良くなっていく時代の経験を持っていないのです。だから何に幸せのイメージを持つかというと、自分の身近な手触り感のあるもの─よく言えば「ささやかな幸せ」ですが、悪く言えば「小市民的な満足」となる。
そうなると、政治や社会の理想的イメージなんて持ちようがなく、漂流した状態で生きている。
特に深刻なのは、階層の固定化です。所得のジニ係数で見ると、一見米国やヨーロッパよりも日本の格差は小さいように見えますが、固定化という観点で見ると日本は資産の不平等が大きく、お金持ちに生まれたら、いい大学を出て、いい企業に就職することができますが、そうでなければいい教育を受けられず、いい仕事にも就けないという悪循環になります。
こうした階層の固定化が顕著になって10年余り、多くの若者たちは希望を持てずにうつむいているのです。
希望がないから投票しない、社会に対する望ましいイメージを持てないから投票に行かないという悪循環によって、政治の硬直化はますます進み、日本が変われない1つの要因となっているのでしょう。
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