日本はなぜ、極右など右派ばかりなのか

島田雅彦×波頭亮 日本の精神文化のゆくえ(上)

ただ、多くの人が誤解しているようですが、フリードマンもネオリベラリストも、市場メカニズムの尊重と自由主義を第一としながらも、社会の安定と継続的な発展のために再配分を大変重視しているのです。

市場主義に任せて経済活動を行い、再配分機能が働かなければ社会は早晩破綻するとフリードマンは言っています。そのために「マイナスの所得税」というアイディアを出したのも、実は彼です。

ところが、日本の自由主義者、リベラリストの口からは「再配分が大事」という言葉は聞こえてきません。

十分な再配分があって、初めて社会は持続的・継続的に機能していくのですが、極右にしても右翼にしても中道にしても、自由主義を標榜する人たちにはこの視点が欠落しているのです。

政治的無関心がもたらすもの

島田:もう1つ問題点を指摘すると、政治的無関心が他国に比べて進んでしまっている。それも、選択肢のアンバランスに関係してくると思いますが、首都圏に暮らす30歳の男性がいたとして、彼が自分の思いを代弁してくれる政党はどこかと考えたとき、それはどこにもないのです。

自民党は地方で隠然たる権力を持っていたボスの利益代弁者で、地域に利益をもたらしてくれるボスの世話で票が取りまとめられてきましたが、高度経済成長期に地方から都心に出てきた、寄る辺ない人たちが増えてきました。

彼らは地方から離れて自民党からも心が離れ、都心で働く労働者として自分たちの利害を代弁してくれる政党を支持するようになりましたが、いつしかそうしたつながりは薄れ、都心の有権者は個々の政策よりも、候補者のキャラクターで投票するようになってしまった。

それは、エンターテインメントの世界の視聴率競争と何ら変わりありません。

民主主義の理想が崩れた後は、どうしてもキャラクター重視のポピュリズムにならざるをえないわけですが、国民に正当な対立軸を提示できなかった日本の民主主義の失敗が、徹底した政治的無関心を定着させたのでしょう。

インテリを政治に介入させまいとする伝統は今も根強いという気がします。

次ページ”小市民的な満足”の結末
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