ただ、2018年卒採用だけに限って言えば、「2月15日採用広報解禁」への変更はないだろう。就職情報会社の2018年卒向け就職ナビの正式オープン日や、合同企業説明会の会場予約もすべて「3月1日採用広報解禁」を前提に進められている。各企業の個別説明会・セミナーの会場予約や、大学内での企業説明会のスケジュール調整も同様である。
経団連や文科省が実施している調査も無駄にはならない。2018年卒採用には間に合わないが、あくまでも2019年卒採用以降に向けたスケジュールを検討する上では貴重なデータになる。2019年卒採用でスケジュールの見直しをするのであれば、発表から実施までに少なくとも1年以上の猶予は必要である。説明会等の会場予約だけでなく、企業、学生への周知徹底も必要になる。
経団連が望むスケジュールとは
仮に見直すとした場合、経団連はどうしたいのだろうか。経団連は、歴史のあるメーカーの割合が多く、理系採用も多い。歴代会長も第7代の平岩外四氏(東京電力会長)を除きメーカー出身者が就任している。発言力の点でもメーカーのほうが強い団体といえる。そのため、理系学生の採用、果ては育成までを考慮したスケジュールを望んでいる。かつての「就職協定」では、「対象は文系学生であって、理系学生はこの限りでない」という考え方が不文律になっていた。
しかし理系学生が、メーカーだけでなく、金融、商社、情報など幅広い業界にどんどん就職するようになると、推薦制度を利用した就職活動から、文系学生と同様に、自由応募での就職活動が行われるようになった。理系学生と文系学生を分けて考えることは難しく、2015年卒採用までの「倫理憲章」や、2016年卒採用からの「指針」では、理系学生も対象であることが明記されている(大学院博士課程は対象外)。
では、具体的に経団連が望むスケジュールとはどんなものか。それは、理系学生ができる限り早く就職活動を終えて研究活動に没頭できるスケジュールで、具体的には2015年卒採用までのルールだった「12月採用広報解禁、4月採用選考解禁」となる。このスケジュールを最良と考えており、「3月採用広報解禁、8月採用選考解禁」とした2016年卒採用の「指針」は、あくまでも政府(安倍首相)に押し切られて、仕方なく変更したに過ぎない。
経団連加盟企業の多くは、理系学生には早く就職活動を終えて、研究活動に没頭してほしいと思っている。最終学年の卒業研究での試行錯誤の繰り返しや、学会での論文発表などを経て、理系学生はエンジニアとして大きく成長する。しかし、就職活動の長期化は、そうしたことにかける時間を邪魔しているのだ。
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