富士通、パナが「半導体再編」を急ぐ事情 見切り発車のシステムLSIの事業統合

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富士通のウミ出し

煮え切らないまま発表に踏み切った背景にあるのは富士通の焦りだ。

富士通は同日、2013年3月期の業績見通しを下方修正。950億円の最終赤字に転落することを発表した。半導体事業の構造改革費用1120億円や欧州子会社ののれん減損280億円など、1700億円もの特別損失を計上するためだ。

「半導体に手を打たないといけないが、そうすれば特損が出る。その数字を前提に経営をしないと改善策も打ち出せない」(富士通幹部)。監査法人からも半導体事業の減損を迫られており、今期中に負の遺産を処理する必要があった。尻に火が付いていたわけだ。

「統合会社は、ゾンビ事業の寄せ集めではない。世界で戦うために、政投銀からの出資を元に成長戦略を描く」(富士通幹部)と意気込むが、簡単なことではない。

今回の統合は設計・開発のみのファブレス形態を取る。巨額投資を要する半導体工場を持たないことで大幅に負担は軽減される。が、ファブレス化すれば、成功を約束されるわけではない。

富士通はシステムLSI事業の統合と並行して、半導体工場の再編も進めている。稼働率が50%以下に落ち込み、赤字の元凶となっている200ミリウエハ以下のライン(三重工場と会津若松工場)は減損の上、集約する。

一方、稼働率90%を超える三重工場の先端300ミリ生産ラインは分離し、半導体受託製造最大手の台湾TSMCからの出資をあおぐ交渉を続けている。ソニーやキヤノンなど優良顧客を抱える三重工場だが、コストの安い海外に世界最先端の半導体工場を有するTSMCにとってどこまで魅力的か。富士通はマイノリティ出資となり、事実上の売却をもくろんでいる。

パナソニックにも再編の誘いに乗る事情がある。

「うちの半導体は機能が多く、値段が高すぎる」と、パナソニックの津賀一宏社長は指摘する。パナソニックの半導体事業は自社製品向け主体に発展してきた。だが、自社のテレビやBDレコーダーが売れなくなった今、量が出ない半導体のコストは高止まりし、それが製品の足を引っ張る悪循環。昨年からは「慣れない半導体の外販を進めているが、余剰人員を多く抱えて苦しい」(パナソニック幹部)との声が漏れる。

パナソニックの狙いは、半導体事業の人員切り離しと将来的な調達価格の引き下げにある。つまり、新会社は主要顧客から厳しい値下げを迫られる宿命にある。富士通とパナソニックでは重複製品も多い。人員リストラとも絡むだけに、条件のすり合わせは難航必至だ。

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