私の試算によれば、川内原発と同様の仕方で評価した場合、高浜1、2号機の水素濃度は約13.3%であり、判断基準をオーバーしてしまう。関電が計算に用いた解析コードMAAPは、水中条件での精度検証がされておらず、しかも国際的な専門家による検討では、相互作用を過小評価する特性があると報告されている。
この過小評価の問題については、高浜3、4号機についての新規制基準に基づく適合性審査書案のパブリックコメント(意見募集)で意見を提出したが、規制委はまともな回答をしていない。また、審査が先に終わった他のPWRと同じように、高浜1、2号機を対象とした過酷事故シミュレーションに関して、別の解析コードを用いたクロスチェックをしていないことも問題だ。
付け焼き刃の対策でむしろ危険度を増している
――本来の安全対策はどうあるべきだとお考えですか。
滝谷 採用されている過酷事故対策は、原子炉施設本体はほぼそのままにして、代替格納容器スプレイポンプ、可搬式の電源車、注水車など付け焼き刃的であるとともに、いずれも自動起動でなく手動操作によるものであり、作動の信頼性を欠いている。過酷事故対策は、抜本的な安全対策になっているどころか、危険度を増やす対策が入っていると言わざるをえない。
原子炉格納容器の下部に水を注入して落下した溶融炉心を冷却する方法は、注水の実施そのものに不確実性があるうえに、水蒸気爆発の危険性がある。これについても労働安全衛生規則第249条「水蒸気爆発を生じさせないために、溶融高温物を取り扱うピットの内部には水を浸入させないこと」に違反している。つまり、冶金工場や溶鉱炉など一般産業分野の「常識」に反しているのである。
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