このように、格納容器内の水素爆発防止対策、溶融炉心冷却対策とも、妥当性を欠くどころか、危険ですらある。欧州の新型炉では「コア・キャッチャー」と呼ばれるドライ(水を用いない)な状態で溶融炉心を受け止める対策が導入されている。これは、原子炉格納容器の底部に耐熱材料でできた受け皿を設置することで溶融炉心とコンクリートの相互作用を防ぐとともに、溶融炉心を長期的に冷却することを目的とした設備だ。
すでに建てられた日本の原発に今から導入することは容易ではないだろうが、仮にも再稼働をめざすのであれば、規制委は設置を義務付けるべきだろう。それができない原発は廃炉にするしかない。
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以上のようなインタビューを踏まえ、記者は、原子炉格納容器の下部に水を注入して落下した溶融炉心を冷却する方法が水蒸気爆発を引き起こすおそれがある点において労働安全衛生規則第249条に違反しているのではないかとの滝谷氏の問題提起について、関西電力、厚生労働省、原子力規制庁に見解を求めた。
労働者の安全確保のための審査が行われていない
関電は水蒸気爆発等の労働者の安全問題について、格納容器内に労働者がいないことを確認してから注水することを理由に労働安全衛生規則第249条には違反していないと回答している。また、厚労省は同規則第249条が適用されるのは製鉄所など溶けた金属をドライな状態で取り扱う施設を想定しており、原発では重大事故時に溶融炉心を水で処理することを想定しているために違反しているとは言えないと回答している。
一方、規制庁は新規制基準の一部を構成する「炉心損傷防止対策及び格納容器破損防止対策の有効性評価に係る標準評価手法(審査ガイド)」の策定に際して、労働安全衛生規則の条文を満たしているか否かについて、厚労省の担当部局に確認の手続きは実施していないと回答している。いずれにしても労働安全衛生規則に照らしてきちんと審査が行われた事実はない。
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