激烈格差!甲子園「都道府県」勝率ランキング

涙のドラマを生む「甲子園の魔物」の正体

その証拠に、監督には背番号が与えられておらず、試合中は守備についている選手たちに直接声をかけることもできない。監督の役割は日頃の練習を通じて選手たちを育てることであり、試合は選手たちが日頃の研鑽を披露する場なのである。そこで監督の存在感が増すのは望ましくない。

こうした高野連の配慮の効果もあり、先ほど分析したように加盟校数が少なくても高い勝率をあげる県(高知、和歌山、奈良など)が出てくると考えられる。実は、こうした高野連サイドの“配慮”以外にも、甲子園での勝率を左右する要素がある。それは、特定の高校への野球部員の一極集中である。

たとえば、高野連加盟校数34の高知にある明徳義塾高校は、150人超の野球部員数を誇る強豪校である。1984年の選手権大会初登場以来、2015年までの32年間で17回も出場し、その間の成績は29勝16敗で勝率は64.4%である。そして、今年の高知県大会でも優勝し、これで夏の大会へは7年連続出場となった。つまり、高知県の好成績は、明徳義塾の活躍によるものなのである。

このように加盟校数の少ない県が甲子園で勝つためには、戦力の集中が効果的とも言える。ただ、それが県大会の活性化につながるかというとそれは別問題で、愛知のようにここ10年の甲子園大会での勝率は37.5%と低いものの、強豪4校が代表の座をかけて争う県大会は大きな盛り上がりをみせるという例もある。

さて、話を不確実性に戻そう。なぜ高野連はあえて不確実性を高めるような制度設計をしているのだろうか。その背景にあるのは、“1校の格差”問題である。今年の選手権大会で最も参加校が多いのは愛知の190校で、最も少ないのは鳥取の25校である。その比は実に7.6倍に達する。

最高裁も真っ青? 「1校の格差」7.6倍

これだけの差がありながら両県を同等に扱っている現状は、国政選挙で言うなら“違憲”状態だろう。7月の参院選挙のときのように、参加校数39の島根県と合区にして代表校を決めたほうがフェアなようにも思える。

実際、1978年以前は参加校数の少ない県は地区大会で勝たないと代表校を甲子園に送ることはできなかった。鳥取と島根はもちろんのこと、第58回以前は山形と宮城、香川と愛媛、長崎と熊本なども単独で代表校を出せなかったのである。

しかし、現在の高校野球がこれだけ国民的行事となっている理由のひとつは、各都道府県から代表校が出場するからだろう。全試合を放送するNHKも、代表校が1回戦に登場するときには、高校だけでなく地域の紹介もあわせて行っているほどである。

主催者である高野連や朝日新聞社にすれば、夏の大会を全国レベルで盛り上げるためにも、現在の方式は是が非でも守りたいはずだ。それには、“1校の格差”問題が目立たぬように、参加校数が少なく勝率が低い富山、鳥取、島根などの各県に、もうひと踏ん張りを期待したいところだろう。

野球というスポーツ自体がもつ特性と、高野連のこのような「配慮」。その2つがあいまって、「甲子園の魔物」が生み出されるのである。

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