――何か特徴的なカリキュラムはあるのでしょうか。
さまざまな特徴的なカリキュラムがありますよ。具体的には中学1年から変体仮名を読むことが挙げられます。江戸時代や明治時代の文章を当時のままの文体で読むんです。中学1年生でもきちんと教えれば十分に読めます。
これは、武蔵の掲げる「原典主義」であり、本物の文章の味わいを感じてほしいのです。今の国語の教科書には注釈や解説が多すぎると思います。当然ですが、当時の人は注釈も解説もなく読んでいたんです。頭の柔軟なうちにちゃんと教えれば当時の文章の風味や雰囲気を味わいつつ読みこなすことができるんです。
古文書を読んだり、ヤギを飼ったり…… 本物教育とは?
ほかにも「総合講座」という科目があって、奈良時代の古文書を読み解いたり、生命の大切さを感じるためにヤギを飼ったりしています。そういうことは他校ではなかなかできない。都内の高校でヤギを2頭飼っているのはうちくらいです。生徒は盆も正月も絶対にヤギに餌をやりに来ないといけません。でもそうやって生命の大切さを知っていくんだと思います。
――ほかにも第二外国語を履修するという取り組みもありますね。
ええ。国際的な取り組みも熱心に行っています。中学校3年から第二外国語が必修です。まずは初級クラスから始めますが、ある程度までできるようになったら、高校2年のときに、2カ月間、現地の学校に送り出すんです。
国外研修には先生は付き添わない
――送り出すとは?
そうです。言葉のとおり、ドイツやフランス、中国や韓国などの提携校に行って身ひとつで勝負するんです。武蔵の国際感覚の育成は“修学旅行まがい”のものとは違って、送り出すのです。学校間での手続きなどは武蔵が行いますが、先生は現地にはついていきません。
ほかの学校の国外研修というのはたいてい、先生がついていって、観光地を周ってそれでおしまいというところが多い。でも武蔵のやり方は違います。自分の力でホームステイファミリーと合流して、現地の進学校に通います。現地の生徒に交じって現地の言葉で授業を受けます。最初の1週間程は帰りたくて仕方ないようです。授業内容によっては、言っていることの大半がわからないこともありますから。
ですが、しばらくすると授業にもついていけるようになるし、語学力は飛躍的に上昇する。何より大きな収穫なのは、その国の「負の部分」も見られることです。例えば中国では上海や北京などの繁栄している都市だけではなく、貧しい地域や国民間の貧富の格差まで肌で感じられます。こうした経験を高校2年生のときにできるのは、何にも代えがたい経験です。帰ってきた生徒たちは人間的に大きく成長していますし、目の輝きもまったく変わっていますよ。