サイバーエージェント、知られざる“膿出し" 「ガラケー」に見切り、大型特損計上へ

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ところが、サイバーエージェントは年間の純利益見通しを120億円(前期比40%増)と公表している(売上高は1700億円<前期比20%増>、営業利益100億円<同42%減>の見通し)。ここで約70億円の差額が生じるという試算となる。なぜなのか?

特益と特損を”相殺”

実は、この差額が大胆なリストラに踏み出す原資となるのだ。サイバーエージェントは東洋経済の取材に対し、「明確な時期は定めていないが、成長が鈍化しているガラケーに関連したサービスの撤退を予定している」(広報・IR室)と回答した。

最大の稼ぎ頭に育った子会社サイゲームスが手掛けるソーシャルゲーム「神撃のバハムート」。DeNAに一部株式を譲渡し、巨額の利益を得た

昨年から藤田晋社長は「スマホに総バリで経営資源を投下しており、ガラケー、パソコンには注力してない」と語っており、スマホへの完全シフトを進める過程で”膿出し”を行う必要があった。株式や事業の売却でひねり出した特益を特損と相殺できれば、税金対策にもなる。リストラを行うには絶好のタイミングなのだ。

こうしたアセットライト(資産圧縮)を推し進める背景には、ネット業界の古株でありながら、規模、収益性ともに先行を許したグリー、ディー・エヌ・エー(DeNA)の存在が大きいと言えそうだ。

売上高では2社の後塵を拝し、資産効率を表すROA(=Return On Asset。総資産利益率)はそれぞれ前期末でグリー29%、DeNA22.6%に比べ、サイバーエージェントは6.2%にとどまる。

会社の命運をかける「アメーバスマホ」はゲーム一本足でなくコミュニティ機能があるという点でグリー、DeNAと違いはあるが、サイバーエージェントも2社とほぼ同様のビジネスモデルを志向しており、2社と比肩する経営指標の獲得が一つの目安になる。

「仮想敵はいない」と藤田社長は語る。だが、大規模宣伝のかたわら潤沢なキャッシュを獲得、さらに資産の組み替えを素早く遂行するという今期の決算――。藤田社長の脳裏には、緻密な戦略が隠されているようだ。

(撮影:今井 康一)

※記事初出時、「アメーバを含めたガラケー向けのサービスからほぼ完全に撤退する」と記述しておりましたが、ガラケー向け「アメーバ」のプラットフォームそのものは対象ではありません。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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