化学メーカー「大再編時代」、日本は勝てるか 住友化学社長が語る「今後の生き残り戦略」

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とくら・まさかず●兵庫県出身。1974年東大経済学部卒、住友化学入社。電子材事業部長や技術・経営企画室部長などを経て、2006年常務執行役員。2011年4月より現職

ーー伝統的な石化事業については、今後の国内の環境をどう見ていますか。

過剰だったナフサクラッカーの能力削減が進み、ひとまず需給ギャップが薄れたが、先行きは厳しいだろう。内需自体のさらなる減少は避けられないし、これから米国でシェールガス由来の石化製品が大量に出てくる。

今はまだ裏庭の南米に輸出されている程度だが、(建設中のプラントが相次ぎ稼働する)2017~2018年には生産量が一挙に増え、アジア市場に流れ込んでくるのは時間の問題だ。

シェールガス由来の石化製品はコストが安く、(石油を原料としている)日本の石化製品はコスト的に太刀打ちできない。少なくとも、中国、東南アジアなどへの輸出が難しくなる。国内の業界全体としては、さらなる上流設備の能力削減が避けられないだろう。

ーーそうした中で、石化事業をどうマネジメントしていくのですか。

当社は日本、シンガポール、サウジアラビアの3カ国で石化製品を生産しており、立地によって戦略も異なる。まず国内に関して言えば、すでに2015年に自社でのエチレン生産をやめるなど、思い切った構造改革をやった。前倒しで対策を講じたので、当面は現状維持で行く。

石油化学は海外事業に軸足

ーー海外の2拠点については?

シンガポールは子会社のTPC(ザ・ポリオレフィン・カンパニー)でポリエチレンやポリプロピレンを生産し、主に東南アジアと中国で販売している。事業の歴史が古く、アジア一円で優良なお客さんをつかんでいるのが大きな強みだ。今後の方向性としては、製品の高機能化、高付加価値化を目指していく。

サウジアラムコとの合弁で展開するペトロ・ラービグの石化プラント。世界最大級の複合プラントで石油製品、基礎化学品を生産する

一方、サウジで現地国営サウジアラムコと合弁で運営しているペトロ・ラービグは、安価な随伴ガスを原料としており、非常にコスト競争力が高い。

操業開始が2009年とまだ日は浅いが、今年から第2期プラントも立ち上がる。ラービグは莫大な資金を投じて立ち上げたプロジェクトなので、キャッシュカウに育てて、投資を確実に回収していく。

ラービグも主な販売先は中国、アジアになるが、TPCは高付加価値品、ラービグは汎用品といった具合に、それぞれの持ち味をいかしてやっていく。石化も決して手を抜くわけではなく、海外生産拠点を中心にアジア市場でしっかりと利益を稼いでいく。

(週刊東洋経済6月11日号「この人に聞く」に加筆)

渡辺 清治 東洋経済 記者
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