伊藤忠、ANA、電通が期待するミドリムシ バイオベンチャー「ユーグレナ」出雲社長に聞く

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――バイオジェット燃料への年間投資額は?

「支援企業の出資を除いて、2億円弱を考えています。ただ、上場調達資金+ヘルスケア事業で得た収益の中で、赤字にならない範囲内で研究開発を進めます。現在、JALとANAの2社が1年間に使っている9000億円の燃料の1割、つまり900億円分をミドリムシバイオジェット燃料として販売することが、エネルギー環境事業の最終目標です」

――本当にミドリムシでジェット機を飛ばせるのでしょうか。

「すでに既存のジェット燃料と同じミドリムシバイオジェット燃料の開発を実現しています。現在の課題は、コストダウンとミドリムシを数十兆という単位で培養する巨大プールの建設。今後はさらにミドリムシの選定を進めコストを減らし、メガプールを建設して18年度に事業化することを目指しています。その時は、一時的に膨大な投資が必要になりますので、赤字になることも想定せざるを得ないかもしれません」

バングラデシュでの強烈な体験

――そもそも出雲社長がユーグレナを起業しようと考えたきっかけは何だったのでしょうか。

「18歳のときにバングラデシュで見た深刻な栄養失調が原体験になっています。グラミン銀行のインターンシップに行っていたのですが、現地では毎日美味しいカレーが出てくるんですよ。でも、カレー以外何もない。米はお腹いっぱい食べられるのに、牛乳も卵もフルーツも肉も魚も何もないから栄養が不足している。4人に1人が栄養失調の状態でした。これをなんとかしたいなと思って『仙豆』※を探しました。」(※鳥山明原作の漫画『ドラゴンボール』に現れる1粒食べれば10日間飲まず食わずでも平気な豆)

――その仙豆がミドリムシだった?

「当時、大学の後輩だった鈴木(鈴木健吾:現ユーグレナ取締役、研究開発担当)から『ミドリムシだったら動物と植物両方の栄養素を持つからミドリムシが仙豆かもね』と教えてもらいました。ミドリムシに出会ってからは、何の根拠もないけど、2015年に35歳になる時までに、ミドリムシをバングラデシュに持って行って『おお、こいつすごいもんを持ってきたぞ』と喜んでもらいたいっていう夢を持ちまして、ミドリムシでの起業を決意したんです」

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