伊藤忠、ANA、電通が期待するミドリムシ バイオベンチャー「ユーグレナ」出雲社長に聞く
――培養の方法は?
「ミドリムシは食物連鎖の一番下にいますから、59種類も栄養素があったら通常はミジンコやプランクトンなど他の微生物に食べられてしまいます。このため従来の研究では、大量に培養することは極めて困難でした。
私たちは『他の微生物の侵入を防ぐ』という考えから、『ミドリムシしか生きていけない環境を構築する』という発想に転換し、05年に世界で初めて食用ミドリムシを屋外大量培養する技術を発見しました。現在は沖縄県石垣島の培養プールで育てています」
――サプリメントやクッキーなどのビジネス展開について教えてください。
「現在、売上高の約8割がOEM(相手先ブランドによる生産)供給です。ただ、12年4月から『ユーグレナファーム』というブランドを始めて自社販売の強化を進めています。今回の上場調達資金で広告宣伝を本格化し、主にインターネットで販売を拡大していくつもりです。特に『緑汁』に力を入れており、これを18年までに売上高の1割にまで育てていきます」
ジェット燃料にも使える
――ミドリムシはヘルスケア以外にも可能性がある。
「ミドリムシは、地球温暖化や食糧・エネルギー問題など、世界の難題を解決できる可能性を秘めています。CO2(二酸化炭素)の削減や、水をキレイにするなど、さまざまなプロジェクトを電力会社などの企業や東京都などから支援いただいて共同研究しています。これをエネルギー環境事業と位置づけていますが、もっとも有望とみている『一丁目一番地』が、バイオジェット燃料です」
――ジェット燃料?
「私たちはあるとき100種類のミドリムシの中から、ジェット燃料にそっくりな油を体内で作るミドリムシを見つけました。このミドリムシからジェット燃料が作れるんじゃないかと、開発がスタートしました。
09年にJX日鉱日石エネルギー、日立プラントテクノロジーと共同研究を始めましたが、いまでは全日空やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)からも支援をいただいて、国家プロジェクトとしてミドリムシバイオジェット燃料の研究開発を進めています。成功すれば日本がエネルギー輸出国になる可能性も秘めている、これはミドリムシにしかできない一番大きな事業だからです」
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