東京都知事を取り巻く「超複雑」な政治力学 参院選の次は新都知事誕生が焦点になる

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しかし、都議会で都知事をかばう与党的な会派の議員が過半数に満たないと、予算案も都知事肝いりの条例も通らない。予算案も条例も通らないと、都政は停滞する。

さりとて、都知事と都議会が親密すぎて馴れ合っているように都民からみられれば、「談合政治」とかと批判されかねない。議院内閣制をとる国政とは異なり、都知事が議会の多数派によって常に支持されるという保証はない。新都知事が都議会との良好な関係を築けるか否かに、都政の推進か停滞かが決まる。

東京都は、他の道府県と異なり都区制度が存在する。23の特別区のことだ。特別区は市町村とほぼ同格の基礎自治体だが、税制上は市町村が課す税(市町村税)の一部、つまり固定資産税と法人住民税(区民税)、特別土地保有税の3税は直接課さないこととなっている。

これらの税収は、いったん東京都が課税し、55%を財政需要に応じて各特別区に配分し、45%を都が区部の広域行政のために直接支出することとしている。この財源配分は、都と特別区のどちらがどれだけ財源を獲得するかをめぐり、長年にわたり利害対立があった。都にせよ特別区にせよ、できればより多くの財源が欲しいと思っているが、ゼロサムゲームである。

保育と国保は火種になる可能性も

増田寛也元総務相、8日に会見した小池百合子氏のほか、告示に向け立候補者の最終調整が進んでいる(写真:つのだよしお/アフロ)

そもそも、日本の地方自治は、住民に身近な行政サービスである市町村事務と、広域的に便益が及ぶ行政サービスである府県事務から成る。都区制度がある東京都(都庁)は、多摩地域においては府県事務を担う(多摩地域の市町が市町村事務を担う)が、特別区部では府県事務だけでなく一部の市町村事務も都庁が担っている。

財源配分は、基本的に担う事務の経費に比して財源が配分される。近年では、都と特別区の間の事務や財源の配分をめぐる議論は、顕著な対立点はなく平穏だったが、今後対立が再燃するかもしれない火種がある。1つは保育、もう1つは国民健康保険の都道府県単位化である。

目下待機児童が深刻な問題となっている保育は、基本的には区市町村が主体であって、今般の都知事選で争点にしても新都知事にできることは限られる。しかし、東京都は、独自の認証保育所制度を持っており、都と特別区は保育に関わる事務権限と財源をどちらがどれだけ持つかを再検討することもあり得よう。待機児童問題に対してうまく対応できないと、都と特別区とで責任の押し付け合いになるかもしれない。

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