「持ち弾」はまだある!
先のメカニズムを考えてもらうとわかると思うが、「日銀の金融緩和に対するコミットメント」の強さは、マーケットの動向を左右する重要なファクターなのだ。つまり、この点に影響を与えることで、政府は市場にサプライズを与えることができる。もちろん、サプライズには、ポジティブなものだけではなく、オウンゴール的なネガティブサプライズもあり得る。
今後、ポジティブなサプライズを考えようとする立場からは、今回の歯切れの悪い共同声明は、「高すぎないハードル」であり、幾つかの「持ち弾」がある。
まず、経済財政諮問会議で、日銀の政策を厳しく問うていくなら、市場は「日銀はかなりのプレッシャーを受けている」と解するだろう。
また、今回の「緩い」共同声明は、日銀総裁が変わった時に、もっとコミットメントを強めるものに変更する「余地」を残してくれている。
もちろん、日銀の正副総裁の人事も有効なカードだ。
財務省出身の政治力のある「大物」の総裁就任は、将来の日銀の金融緩和継続を曖昧にする点でコミットメントを弱化させるのでネガティブだ。筋金入りのリフレ論者を起用すれば、ポジティブなインパクトを演出できる。
また、コミットメントの強化という意味では、日銀法を改正して、インフレ率の「目標」は政府が与え(その分政府に責任もあるが)、実現の「手段」選択の独立性は日銀が持つという枠組みを作ることが本筋だ。日銀総裁の国会承認にも大きな影響力を持つみんなの党が、日銀法改正案を国会に提出するようだが、これを利用する手もある。
日銀法改正については、安倍首相も、首相のアドバイザーである浜田宏一内閣府参与も、「仕組みを変えることが重要だ」という理解をお持ちと見受けるのだが、首相の周囲は「参院選挙前は安全運転がいい」と考えて、これを進めることに消極的なようだ。
総選挙の結果を見ても、市場の反応を見ても、日銀をもっと強くコントロールして欲しいという「民意」ははっきりしている(日銀をネタモトとするマスコミの親日銀的な報道が、これを分かり難くしている)。
大方の予想を超えて、安倍首相が一歩先に踏み出してみることが、アベノミ
クス相場「第二幕」の幕開けの合図になるのではないか。
もちろん、「持ち弾」はあるはずだといっても、これを矢継ぎ早に撃ってくるとは限らないし、投資家としては、アベノミクスが不発に終わる可能性も考えて置かねばならない。起こりうる可能性を頭に入れて、よく見るしかない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら