安易に「自由」を手放す選択をした英国民の愚

EU離脱の選択で失われた歴史的イメージ

EU離脱で英国のイメージは様変わり? (写真: ロイター/Luke MacGregor)

原文はこちら

私は英国人の母親とオランダ人の父親を持つ英国系オランダ人だ。そのため今回のBrexit(ブレグジット、英国のEU離脱)をつい個人的な出来事として受け止めてしまう。私はユーロ信奉者ではないが、今は事故で手足を失ったような感触すら覚えている。

英国は200年間以上にわたり、自由と寛容の国家としての手本だった。移民を積極的に受け入れてきたことは、その一つの表れである。

過去においても英国では1800年代後半に、ユダヤ系のベンジャミン・ディズレーリ氏が保守党の首相に就いたこともある。1960年代にはビートルズやローリング・ストーンズといった若者文化が世界に広がり、英国の自由の国というイメージは強固となった。

イメージは一夜で様変わり

いくら産業が衰退し、国際的影響力が低下しても、私にとって英国はナンバーワンだった。そうしたイメージは、Brexitによって一夜で様変わりしてしまった。

もちろん私のような感情がすべてではない。オランダの極右政党・自由党のヘルト・ウィルダース党首はBrexitを受けてこうつぶやいた。「英国に万歳!今度はわれわれの番だ」。こうした破壊への衝動は伝播する。今後われわれは、離脱が英国や世界の経済にもたらす負の影響はもちろん、こうした思想も警戒すべきである。

投票者の過半が離脱を選んだことには、当然ながら合理的な理由もある。荒廃した炭鉱町、寂れた港町や崩壊寸前の重工業都市に住む労働者たち。彼らはグローバリゼーションの恩恵を被るロンドンの金融街から取り残され、移民によって職を奪われている。今まではそうした不満を口にしたところで、単に人種差別主義者と片付けられていた。

外国人に対する警戒心は、外国人が少ない地方でより顕著だ。実際、多国籍都市のロンドンではEU残留が支持され、地方の多くでは離脱が支持された。

次ページEUを破壊しても自由は保障されない
政治・経済の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • 本当に強い大学
  • 西村直人の乗り物見聞録
  • 日本野球の今そこにある危機
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
ANAが希望退職実施へ<br>雇用維持貫くJALとの差

ANAホールディングス傘下の全日本空輸は10月7日、退職金の割り増しによる希望退職の募集を労働組合に打診。一方の日本航空(JAL)は同日に開かれた定例会見で、人員削減の考えはないと明言。両社で対応が分かれた要因とは。

東洋経済education×ICT