「円高で訪日客が減る」が絶対に間違いな理由

日本には為替に左右されない魅力がある

実は、この主張には3つの問題があります。

1つ目は、構造変化である「ビザの緩和」です。2013年から日本政府は、訪日観光客増加に大きな効果が見込まれるタイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、そして中国からの観光客のビザ発給要件を大幅に緩和しています。その効果は顕著にあらわれており、これらの国からの観光客が目に見えて急激に増えました。つまり、訪日客数増加には、このビザ緩和が大きなパラダイムシフトとなっているのです。

このように訪日客数というデータの「基礎」に大きな変化があるなかで、為替の動きと比較して因果関係があるという結論に結びつけるというのは、分析としては問題があると言わざるをえません。

2つ目の問題は、「一本調子問題」ということです。

確かに、最近の為替と訪日客数の動向を見ると、両者には相関関係があるように見えます。ただ、逆にこれが問題でもあるのです。というのも、この時期、為替も観光客数も「右肩上がりの一本調子」になっているからです。

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これだけ「一本調子」では、相関分析に適さない

分析の基本理論上、2つのデータは一定期間中、下がったり上がったりという動きが重なるのであれば、間違いなく一定の相関関係があると言えます。しかし、一本調子の右肩上がり傾向にある2つのデータを比較すると、本当は一次的な関係はないにもかかわらず、その2つにあたかも深い関係があるように見えてしまい、相関関係があるという仮説を導いてしまっているおそれも否めません。

ちなみに、2015年に入ってからは円高になっているにもかかわらず、訪日外国人観光客数は増え続けています。2015年から2016年までの相関係数は、2011年から2015年までの相関係数の数値より急激に下がっています。まだ十分にデータはそろっていませんが、両者の相関関係はすでに弱くなりつつあります。

ただ、私がこの分析を問題だと感じる最大の理由は、3つ目の「データ分析の期間」です。

「インバウンドバブル説」最大の問題点

2つの出来事に相関関係を求めるには、できるだけ多くのデータ、つまり長い期間の数値を出して比較をしなくてはいけないというのは、分析の基本です。

では、実際に長期間で訪日客数と為替を見てみると、相関係数は約0.3まで下がります。

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