「円高で訪日客が減る」が絶対に間違いな理由 日本には為替に左右されない魅力がある

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訪日客は為替に遅れて反応すると考えられるため、1カ月、2カ月調整した数値も計算した。高い相関が認められるのは円高と訪日客増加が「一本調子」だったときに限られることがわかる

よりわかりやすいところで言えば、1990年代は1ドル140円前後で、現在の1ドル110円前後と比べても、顕著に円安でした。にもかかわらず、日本の外国人観光客は、現在と比べても極めて少なかったのです。観光客数が増加したのは円安だからと言うのであれば、1990年代はもっと円安だったのに、訪日客がそれほど来ていなかったことを説明する必要があります。

為替と訪日客数に、まったく関係がないということはないでしょう。しかし、日本政府の観光戦略が2013年に、それまでと大きく異なるパラダイムシフトを迎えたのは紛れもない事実です。このようにデータの背景事情に大きな変化があるにもかかわらず、円安の右肩上がりと、訪日客数の右肩上がりを比較するのは、分析として無理があります。

そもそも、「円高になると外国人観光客が減る」というのは、「観光立国」を目指していくうえでは表面的な議論であり、もっと本質的なことを議論すべきだと私は考えています。

それは、たびたび繰り返し主張をさせていただいている、日本の観光資源の魅力についての議論です。

日本には為替に左右されない力がある

「NHK大河ドラマ」の舞台になる、伊勢志摩サミット、ゆるキャラ、ご当地グルメ、有名人を起用したイベントなどなど、観光PRができて情報番組などで紹介されれば、観光客は黙っていてもやって来る。日本の観光関係者とお話をしていると、やはりまだこのような考え方が残っていると感じます。

それは一言で言えば、観光客数を重視をして、「ブーム」を狙う考え方です。

日本の人口が右肩上がりで急増している1990年代までの時代なら、この観光戦略で問題ないと思います。観光資源の整備や、魅力を磨くことなく、とにかくPRに力を入れて何かしらの「ブーム」を仕掛けることができれば、分母が増えていくので、観光収入もそれなりに得ることができたはずです。

しかし、今は国内の人口が減り続けていることによって国内観光客の母数が減少しており、海外からインバウンドを迎える時代です。

こうなると、国内観光産業は、「リピーター」を増やし、ひとりあたりの単価を上げていくことが求められます。国民の人口減少分を補うため、ひとりあたりの滞在時間をのばし、それに耐えられるだけの観光資源の魅力を磨くのです。企業の経済活動的な表現で言えば、顧客満足度を上げていく必要があるのです。

それは、海外観光客誘客戦略も同様です。

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