「桜押し」は、ひとりよがり観光戦略の象徴だ アトキンソン氏が考える正しい戦略とは?

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桜が美しいのは確かですが、外国人にウケているかというと…?(写真:まちゃー / PIXTA)
「桜は、年に1~2週間しか見られない『希少生物』。それを国の観光PRに多用するのは、考え直したほうがいい。たとえば『コアラ』が年に1~2週間しか人前に姿を現さない動物だとして、オーストラリア政府はこれほどPRしただろうか」
外国人向けの観光情報に多用される「桜」。その美しさは認めるものの、「外国人観光客向けの情報発信」として考えると、問題が非常に多いという。
どういうことか。書籍『新・観光立国論』や、その続編『国宝消滅』などで日本の観光政策に関する提言を続けているイギリス人アナリスト、デービッド・アトキンソン氏が解説する。

 

ベストセラー『新・観光立国論』に続く、観光立国の必読書! 国宝をはじめとした文化財が陥っている「窮地」を明らかにするとき、日本経済再生の道が見えてくる。規格外の知的興奮!

前回、3月30日に政府が公表した「明日の日本を支える観光ビジョン」(案)について、日本が「観光先進国」へ向けて大きな第一歩を踏み出したと高く評価しました。

ですが、まだまだ課題もあります。今回は、「情報発信」について考えてみましょう。

「観光ビジョン」の中には、「インバウンド観光促進のための多様な魅力の対外発信」という施策があり、これまで以上に海外に日本の魅力を伝えていく姿勢が明確にされています。

具体的には、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアを中心とする富裕層も含めたターゲットに対してストーリー性のある日本の伝統文化を発信したり、日本向けのツアーの造成を促進するなどの取り組みを行うほか、在外公館やNHKの海外向け放送を活用して「日本の魅力」を広く世界に届けていくとしています。

観光の基本中の基本は、「多様性」です。魅力発信にも「多様性」が極めて重要です。実際、これまでの日本の魅力発信は、もっと多様化する必要があると思います。分析をすると、従来のPRは歴史、文化に偏重しすぎている印象が強いのです。

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