「桜押し」は、ひとりよがり観光戦略の象徴だ

アトキンソン氏が考える正しい戦略とは?

運良く「桜」の時期に来日したとしても、いいことばかりではありません。ご存知のように、「桜」の時期は、日本人の見物客であふれており、右も左もわからぬ外国人観光客がガイドブック片手に気軽にやってきて、楽しめるような雰囲気ではありません。場所取り、見物のための大行列、ホテルや宿もいっぱいで、新幹線の席もとれないという状況もあります。「桜」に魅力を一局集中させてしまうことで、このようなマイナス部分にも目が集まってしまうおそれがあるのです。

理由2:「桜」の時期以外は美しくないのか?

「桜」への過度な集中をやめるべきだと考える2番目の理由としては、「誤ったメッセージを伝えるおそれ」があるからです。

ご存知のように、「桜」が観光できる期間は非常に短いです。長くても2週間程度、雨などが降ればわずか数日で散ってしまいます。日本のガイドブックやパンフレットにはいたるところに「桜」の絵や写真があるのに、結局、本物の桜を見ることなく帰国の途につく外国人観光客ばかりというのが現実なのです。

そんな希少動物のような「桜」を、国をあげてPRするということは、日本というのは1年のうちにわずかな期間だけしか「美しい風景」を見ることができないという情報を発信していることになります。これは裏を返せば、「桜がない時期に日本に来てもおもしろくないですよ」というメッセージを間接的に伝えてしまうおそれがあるのです。

たとえば、オーストラリア旅行を想像してください。日本人にも人気の渡航先ですが、ここを選んだ理由に、「コアラ」があったという人も多いのではないでしょうか。オーストラリアにいけば、いたるところで「コアラ」は見られます。だから、オーストラリアは国をあげて「コアラ」をPRするのです。

しかし、もしもこの動物が、1年でわずか1~2週間しか人間の前に現れないような希少動物だとしたらどうでしょう。オーストラリア政府はそれでも「コアラ」をPRしたでしょうか。

私はしないと思います。見られないことが多い観光資源などPRしても、観光客に失礼です。「芸者」のPRはこの類です。一見さんお断りで、外国人観光客はなかなか本物の芸者さんを目にすることができないのに、日本のPRにはかなり登場しています。これは、日本人が誇りに思っていることをPRしているだけで、相手のことを優先していない証なのではないでしょうか。

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