「桜押し」は、ひとりよがり観光戦略の象徴だ

アトキンソン氏が考える正しい戦略とは?

拙著『新・観光立国論』でも指摘させていただいていますが、基本的に日本の情報発信は、日本人が考える「外国人というのは、日本のこういうところに興味があるだろう」という想像や、「興味があるに違いない」という根拠が疑わしい思い込みに基づいていることが少なくないのです。

訪日外国人たちやターゲットとしている国の人々に対して、日本のどのような魅力に惹きつけられるのかという徹底的な市場調査を行うわけでもなく、自分たちが「日本の魅力」と考えているものを一方的に発信する姿は、厳しい言い方をすれば、「ひとりよがり」でさえありました。たとえば、先日調査をしていたある県のHPでは、お国自慢の「果物」の記載しかありませんでした。おいしい果物も魅力的ではありますが、それだけで「訪れてみよう」と思う人は少ないのではないでしょうか。

この理由のひとつとして、日本のPRは従来、ほぼ「純日本製」だったということが挙げられます。たとえば、英国政府観光庁(Visit Britain)の職員の35%はイギリス人ではないのに対して、日本政府観光局(JNTO)はそこまでではありません。どうしても日本目線になりやすかったのではないかと思います。これも昨年から海外の広告代理店を使うようになったので、大きな進歩だと思います。

桜は「ひとりよがり」の象徴

アトキンソン氏は、桜を前面に出す日本の観光プロモーションを「ひとりよがり」の象徴と指摘する

そんな従来の日本の魅力発信を象徴するものが、「桜」です。

訪日外国人向けのパンフレットやウェブサイトを見ると、必ずと言っていいほど「桜」のデザインがかなりの面積を占めています。

日本政府公式の観光情報が掲載されたJNTOのウェブサイトでも、4月は春ということでしかたがない部分があるとは言え、どこを見ても「桜」だらけでした。

平城宮跡、天橋立、由布岳、松山城、富岡製糸場などの自然や文化財だけではなく、カップヌードルパークなど幅広い観光スポットが紹介されていますが、その写真はほとんどが、「桜が満開」の風景なのです。日本のトイレについて紹介したコラムにも、なぜかランドセルを背負った小学生が、桜並木で飛び跳ねている写真が使われているほどなのです。

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