二極化する中央ヨーロッパ諸国の銀行 スロベニアなど3カ国に大きな課題
2012年12月中旬に欧州連合(EU)は、2014年から銀行監督の権限をECB(欧州中央銀行)に移すことで合意したため、ユーロ圏のシステム上重要な銀行は、ECBの監督下に入ることになった。
銀行監督一元化に向けて動き出したEU
ECBはユーロ圏の約6000行の銀行のうち、約150行を監督するとともに、小規模銀行についても問題があれば介入できる権限を持つことになった。ユーロ圏の銀行監督一元化は欧州連合にとって重要な危機管理措置であると言える。
しかしながら、欧州連合の27の加盟国のうちに10カ国はユーロ圏に加入していない。イギリス、デンマークとスウェーデンを除けば、ユーロ圏に加入していない国は旧社会主義の国々である。一方で、旧社会主義国の中でも、3カ国(スロベニア、スロバキア、エストニア)はユーロを導入している。
ユーロ圏で実現される銀行監督一元化と、ユーロ圏に加入していない国々での銀行監督の共存は、今後の重要な課題である。しかし、現在中東欧諸国の銀行セクターの勝敗の決め手は、ユーロが導入されているかどうかではなく、異なる要因によるものである。その要因を把握するため、中央ヨーロッパ諸国の銀行セクターの近年のパフォーマンスを分析することにした。
貸出残高の対GDP比率は異なる動きに
中央ヨーロッパ諸国で営業する銀行の08年と11年の貸し出し活動を比較すると、ハンガリーとオーストリアの例外を除き、貸出残高の対GDP比率(貸出残高/GDP)は、中東欧で伸びたと言える。
しかしながら、同比率と一人当たりGDPの関係を取ると、やや複雑な動きとなる。複数の中東欧の国(ポーランド、スロバキア)では、貸出残高の対GDP比率が一人当たりGDPの向上とともに上昇する一方、チェコ、スロベニアとルーマニアでは同比率は一人当たりGDPが減少しながらも、上昇している。
また、ブルガリアでは貸出残高の対GDP比率と一人当たりGDPの双方が有意な変化を示さなかった。2011年にオーストリアとハンガリーの一人当たりGDPが成長した一方で同比率は減少した。
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