二極化する中央ヨーロッパ諸国の銀行 スロベニアなど3カ国に大きな課題

拡大
縮小

ルーマニアの銀行セクターもこの2年間収益性指標はマイナスだったが、外資系銀行の株主は自己資本を引き上げざるをえなかった。そのため11年にルーマニアで営業する外資系銀行は2.8億ユーロを受け取り、さらに2012年上半期に5.5億ユーロの追加的資本注入を受けた。

07年にハンガリーの銀行セクターの自己資本関連指標は最低だったが、毎年改善し、現在ハンガリーは中東欧で四番目に高い自己資本比率(13.2%)となっている。

これは10年までハンガリーの銀行が利益を出していたのと、危機発生後にリスクの低い資産を増やしたビジネス戦略による結果である。外貨建て住宅ローンの一括繰り上げ返済はハンガリーの銀行セクターの収益性に悪影響を及ぼし、親銀行が資本増加を図り、ドーター銀行の自己資本比率は改善した。他の銀行の場合、戦略的な決定がなされ、ドーター銀行は親銀行の支店に転換し、所要自己資本比率に見合うのは単独レベルではなく、親銀行のレベルで見合うようになった。

終わりに~二極化する中東欧諸国の銀行セクター

中東欧諸国の銀行セクターの近年のパフォーマンスを分析した結果、対象となった国々は2つのグループに分かれるという結論に至った。

一つは08年の危機発生後も貸出残高が伸びているポーランド、チェコとスロバキアである。これらの国々では新規貸出が不良債権比率の安定に役立っている。
 対照的にもう一つのグループのハンガリー、スロベニア、ブルガリアとルーマニアは未だに不良債権比率が安定せず、銀行の収益性を阻害している。スロベニア、ルーマニア、ハンガリーの銀行セクターは最も多くの問題を抱えている。

3か国の銀行セクターはマイナスのROEと不良債権比率の持続的な上昇の問題を抱える。3か国ともに資本注入が必要となったが、重要な相違点はスロベニアが納税者の負担でなされるのに対して、ハンガリーとルーマニアは政府介入なしに資本増加が実施されたことである。

イシュトヴァーン・パップ ハンガリー金融庁調査部副部長。ブダペスト経済大学卒。1991年ハンガリー中央銀行入行。1996年一橋大学大学院経済学研究科経済学修士号獲得。01年一橋大学大学院経済学研究科博士課程中退。一橋大学大学院経済学研究科、法政大学比較経済研究所などを経て11年から現職。

一つ、この地域全体で改善要因を示すならば、危機発生以前の高い預貸率の縮小で海外からの資金調達依存度が減少したことである。しかしながら、ハンガリーの銀行セクター位置付けは色々な意味で独特である。ここでは貸出行動の縮小は預金残高縮小と海外への資金流出を伴った。

外貨建て住宅ローンの一括繰り上げ返済はハンガリー独特の措置であり、また特別な銀行税は現在欧州で最も高い銀行税である。さらに、13年1月1日から特別な(従来一時的な)銀行税は通常の税となる上、新しい税種として取引税が導入された。

法律上では取引税の対象は金融機関となっている。だが、現在ハンガリーの金融機関の負担吸収能力は乏しいので、この新しい税金は、もっぱら顧客の負担になることが予想される。


 
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