1カ月かけた選手との個人面談
選手は練習がダメなのは監督のせい、コーチのせいだと思っていた。だからこそ、僕らに対して失礼とも言える態度を取っていました。
しかし、なぜ自分たちから「練習を変えたい」、「こんな練習をしたいと思っている」という声が出てこないのか。これこそが大きな問題だったのです。
就任してから1カ月くらいかけて選手全員と個人面談をしました。一対一で向き合えば逃れることはできません。面談では、「優勝したい?」と問いかけました。
当然みんな優勝したいと思っています。重ねて「このままで優勝できる?」と聞くと、「できないと思います」と言う。そして、「練習が良くないと思います」とか、「試合の戦略があいまいです」と不満の声が出てきました。そこで、「このままいくとどうなる? 変えなければ負けるのは自分たちなんだよ。誰が変えるの?」と伝えました。
変化が起き始めたのは、春の最終試合となるライバルの関東学院大学との試合でした。全員が思いをかけて戦ったのに負けてしまった。そこで負けると秋の公式戦でも負けるというジンクスがあり、全員が気合いを入れて臨んだ大事な試合だったのに、です。
しかし、その試合の後、ある中心選手が坊主頭にしてきたんです。「やっと気づきました。選手みんなが監督のせいにしていました。この敗戦をきっかけに気づくことができたんです」と。
その一人が変わったことで、徐々にチームが変わってきたという手ごたえを感じましたね。
レギュラーでない選手の扱いは難しいものです。早稲田大学ラグビー部の場合、6軍までありますし、基本的に1軍以外の選手はみな何かしらの不満を持っているはずです。
全員が満足して監督を信頼しているチームというのはどこかうさんくさいと思います。むしろ、下位チームの選手は「なんで自分が上にあがれないんだ」という強い思いを持って戦って欲しいのです。
とはいえ、不満を持ったメンバーがいる下位チームのモチベーションが下がってしまうことはよくあります。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら