「日本一オーラがない監督」が成功したワケ 元早稲田大学ラグビー部監督 中竹竜二氏に聞く(上)

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1カ月かけた選手との個人面談

中竹 竜二 (なかたけ・りゅうじ)
1973年、福岡県生まれ。早稲田大学人間科学部卒。大学在籍時はラグビー部に所属し、主将も務めた。英国留学を経て三菱総合研究所に入社。06年、早稲田大学ラグビー蹴球部監督就任。07年、08年度全国大学選手権2連覇に導く。10年4月より日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター。12年1月よりU20日本代表コーチも兼務。

選手は練習がダメなのは監督のせい、コーチのせいだと思っていた。だからこそ、僕らに対して失礼とも言える態度を取っていました。

しかし、なぜ自分たちから「練習を変えたい」、「こんな練習をしたいと思っている」という声が出てこないのか。これこそが大きな問題だったのです。

就任してから1カ月くらいかけて選手全員と個人面談をしました。一対一で向き合えば逃れることはできません。面談では、「優勝したい?」と問いかけました。

当然みんな優勝したいと思っています。重ねて「このままで優勝できる?」と聞くと、「できないと思います」と言う。そして、「練習が良くないと思います」とか、「試合の戦略があいまいです」と不満の声が出てきました。そこで、「このままいくとどうなる? 変えなければ負けるのは自分たちなんだよ。誰が変えるの?」と伝えました。

変化が起き始めたのは、春の最終試合となるライバルの関東学院大学との試合でした。全員が思いをかけて戦ったのに負けてしまった。そこで負けると秋の公式戦でも負けるというジンクスがあり、全員が気合いを入れて臨んだ大事な試合だったのに、です。

しかし、その試合の後、ある中心選手が坊主頭にしてきたんです。「やっと気づきました。選手みんなが監督のせいにしていました。この敗戦をきっかけに気づくことができたんです」と。

その一人が変わったことで、徐々にチームが変わってきたという手ごたえを感じましたね。

「組織を良くするのに魔法はない」と語る中竹氏。フォロワーシップを持ち込めば、組織がすぐにうまくまとまる訳ではない。就任以降、悪戦苦闘を続けた中竹氏に対して、周囲の見る目が変わったのは、レギュラーになれなかった選手が起こしたある事件がきっかけだったという。

レギュラーでない選手の扱いは難しいものです。早稲田大学ラグビー部の場合、6軍までありますし、基本的に1軍以外の選手はみな何かしらの不満を持っているはずです。

全員が満足して監督を信頼しているチームというのはどこかうさんくさいと思います。むしろ、下位チームの選手は「なんで自分が上にあがれないんだ」という強い思いを持って戦って欲しいのです。

とはいえ、不満を持ったメンバーがいる下位チームのモチベーションが下がってしまうことはよくあります。

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