シンガポールで再び三菱商事について考えた 日本にとってグローバル化は損か得か?

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ただ、日本の金融インフラも貿易インフラも、世界の趨勢からみるとガラパゴス状態であることは周知の事実である。ましてや米中の2大国に気兼ねしている外交政策を見ると情けない限りだ。実際、日本は貿易立国だとか技術立国だといわれて久しいが、「空白の20年」(失われた20年)を見る限り、国際競争には負けてきたと言わざるをえない。この20年間のGDPの伸び率は世界で最下位に近い。民間企業は血の出るような努力をしたが、日本政府の経済政策にはグローバルな視点が欠けていた。

前出のように、グローバル時代に的確な経済政策を実行してきたシンガポールの研究をすれば、我が国にとって過去20年間に何をなすべきだったのかが見えてくるのではないだろうか。

国際化=グローバル化ではない

グローバル化を語る際には最低限押さえておかなくてはならないことがある。実は、グローバルの概念を本当に理解できている日本人はまだ少ない。というよりほとんどの日本人はグローバル化の意味を誤解しているようだ。

グローバル経済といえば、自由競争が働いて人類の生活が益々便利になって地球全体が豊かになるといったイメージを持つ。だが、幸せになるのは一部であり、大半は貧富の差が益々拡大していく可能性の方が多いように分析される。

グローバル化というのは、「地球規模になる」という意味で使うが、実は国家の存在感が失われ、地球という惑星を1単位として統一していくことだから、民族主義(ナショナリズム)が消滅するという意味でもある。今までは国家ごとに独自の言語、通貨、文化、伝統、習慣がベースになって、それを1単位としてその上に世界という概念があった。

シンガポールは、国際化もグローバル化も世界で最も進んでいる地域である。逆にいえば、シンガポールにとってグローバル化を進めなければ、国家としての優位性が発揮できない体制にあるという見方もできる。

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