ルネサスは手元資金3986億円で何を買うか 呉新社長は得意分野で優勝を目指す

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課題に挑む新CEOの経営手法はいかなるものなのか。「私は自動車の分野は素人だから、基本的には任せる」。2008年にカルソニックカンセイCEOに就任した当初、呉氏は周囲にそう語っていた。カルソニックは自動車部品、日本電産はモーターと、毛色の異なる事業を経営する中で、それぞれの専門的な知識は社内の人材に任せる“餅は餅屋”の手法をとってきた。こうした姿勢はルネサスでも変わらないようだ。

呉氏は就任会見で、自身が半導体の専門家ではないことを認めた上で、日産自動車、カルロス・ゴーンCEOの「答えは社内にある」という言葉を引用。ルネサス社内に蓄積された半導体に関する知見を引き出していくことを重視する方針だ。「社員が指示待ちになるので、細かく指示を出す『マイクロマネージ』はしない。経営者はオーケストラの指揮者のようなもので、人の気持ちをそろえることが大事だ」(呉氏)。

経験に基づくM&A哲学を披露

半導体業界ではここ2~3年、M&Aの嵐が吹き乱れ、急速に業界再編が進んだ。昨年には車載用半導体の競合であるNXPセミコンダクターズ(オランダ)が競合のフリースケール・セミコンダクタ(米国)を買収し、ルネサスは車載用半導体で世界シェア1位から3位へと転落した。

会見後は記者一人一人と名刺を交換。笑顔を見せながら質問に答えていた。社長就任前には電機業界に関する新書を購入し、業界知識を蓄えたという(撮影:風間仁一郎)

呉氏は経営に生かすことのできる自身の経験として、興銀、GE、日本電産で磨いてきたM&Aの手腕も挙げている。

ただ、「いたずらに規模の拡大を目指すM&Aは評価しない」という。M&Aによってシェアが大きくなり過ぎれば、供給先はリスク分散のために複数購買へと切り替える。その結果、むしろシェアが減少する、というのが理由だ。ルネサスの供給先であるカルソニックカンセイでの経験に基づく哲学だ。

「国境をまたぐ企業買収の統合フェーズで、これまでもかなり苦労してきた。結果的にシェアが下がるようなM&Aでは、むしろ統合にかかるコストのほうが上回ってしまう」(呉氏)。

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