ルネサスが電産出身者を新社長に充てた意味 新社長と電産・永守氏の「複雑な関係」とは?

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東日本大震災後の危機を乗り越え黒字化を果たしたが、成長には多くの障害が立ちはだかる(撮影:梅谷秀司)

「買う可能性はある」──。日本電産の永守重信会長兼社長は、4月の決算説明会の場で、ルネサスエレクトロニクス買収への飽くなき意欲を見せた。

ルネサスは、世界トップの車載用マイコンをはじめ、自動車用半導体に強みを持つ。長らく赤字が続いていたが、数度にわたる大規模なリストラと円高一服の追い風もあり、直近2期の純益は800億円台の黒字を計上した。

車載事業を成長分野と位置づける日本電産にとっては、またとない優良案件だが、買収の芽は「当面消えた」というのが業界内の見方だ。その理由は、ルネサスの人事。6月28日の株主総会で、同社の新社長に呉文精(くれぶんせい)氏が就くことになったからだ。

呉氏は、2008年6月から日産自動車系部品メーカーのカルソニックカンセイで社長を務め、2013年6月には日本電産の副社長に招聘された。そこで呉氏は車載や家電分野を担当して成長させたものの、永守氏に求められた営業利益率15%の達成を果たせず、2015年9月に日本電産を退社。両者はいわば、たもとを分かった者同士なのだ。

産業革新機構の会長は日産・志賀氏

なぜ、このタイミングで、呉氏に白羽の矢が立ったのか。そこには、ルネサスの株式69%を保有する官民ファンド・産業革新機構の意向が色濃く反映されている。

産業革新機構はルネサスが経営危機に陥った2013年、同社に出資してマジョリティを握る株主となった。そして現在の産業革新機構のトップは、2015年6月に会長に就任し、日産自動車の副会長でもある志賀俊之氏だ。

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