ルネサスは手元資金3986億円で何を買うか 呉新社長は得意分野で優勝を目指す

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「破綻の危機もあり、社員はリスクを恐れていた。これからは攻めに転じる」呉文精社長は力強く語った(撮影:風間仁一郎)

「これまではリスクを恐れてゴールを奪われない戦い方をしてきた。ここから先は、優勝を目指す」「ボールを奪われないよう、横パスばかりを回してきたが、キラーパスを出していく」。新社長の口から飛び出したのは、攻めの経営に転換する言葉だった。

国内半導体最大手・ルネサスエレクトロニクスの新社長に、呉文精(くれ・ぶんせい)氏が就任した。呉氏は2013年6月、日本電産で副社長に就任したが、約2年で同社を去っている。

日本興業銀行出身で、GE(ゼネラル・エレクトリック)の子会社であるGEフリートサービスや日産自動車系部品メーカー・カルソニックカンセイをCEOとして渡り歩いた「プロ経営者」だ。

生き残るためには、優勝しかない

6月28日に開かれた就任会見で、呉氏が繰り返し強調したのは「優勝」の二文字。「優勝」とは相対的な市場シェアを表し、ルネサスが強みを持つセグメントで1位を目指すということだ。

これまで日本の半導体業界は、顧客の要望に合わせて幅広い製品ラインナップをそろえる「総合型」が主流だったが、2000年代以降、パワー・アナログ半導体やメモリ半導体に特化した「専業型」が世界の勝ち組となっている。「セグメント化が進み、それぞれの市場シェアが1~2位でないと収益を上げられず、3位でやっとブレークイーブン。生き残るには特定のセグメントで優勝できなければならない」(呉社長)。

ルネサスは設立以来の構造改革に一定のメドがつき、2015年3月期から2期連続で最終黒字化を達成している。危機こそ脱したが、収益性の改善はリストラによる固定費削減と為替の影響が大きい。売上高は設立当初が1兆1379億円(2011年3月期)だったのに対し、現在は6933億円(2016年3月期)と縮小の一途をたどっている。どのように売上高を伸ばして成長路線を描くかが、ルネサスに課された課題だ。

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